運動部デスク日誌

トルシエ、殿堂入りするってよ

2020/9/12

 「夏が来れば、思い出す〜」という曲があるが、私には「サッカーW杯が近づくと、思い出す顔」がある。元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏。2002年W杯日韓大会で、日本代表を16強に導いたフランス人指揮官はこのたび、日本サッカー殿堂入りすることが決まった。
 なんで、トルシエ氏の顔を思い出すのか。それは、その日韓大会をW杯担当として取材していたからにほかならない。プロ、アマ含め、数多くの監督と出会ってきたが、彼ほどつかみどころのない難しい人物はいなかったように思う。真面目なのか、冗談なのか。その口調や表情から、判断することができなかった。
 初めて会ったのは、01年5〜6月にあったコンフェデレーションズカップ。大陸王者が集い、W杯のプレ大会として日韓で行われ、決勝までの日本戦計5試合を取材した。1次リーグ2試合を終え、サンフレから招集された久保竜彦、上村健一は出番なし。そこで、3戦目のブラジル戦の前日会見で、手を挙げて「久保、上村を使う考えはあるか」と問うてみた。
 その答えは、今でも忘れはしない。「今朝、広島に住んでいる私の友人から電話がかかってきて、『久保と上村をどうして使わないのか』と聞かれたところだ。私は答えた。ブラジル戦で2人とも見ることができるだろうとね」。会見後、通訳のフローラン・ダバディ氏に「信じて書いては駄目ね」と言われた。
 翌日、カシマスタジアムでのブラジル戦では、上村がフル出場。しかし、久保の出番はなかった。それから約1年間、トルシエ氏には何度かダマされた。その最大のものは「代表に絶対欠かせないジョーカー」とまで言っていた久保のW杯代表の落選だった。
(小西晶)


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