運動部デスク日誌

期待してはいけない男

2020/9/19

 陸上の日本選手権まで残り2週間を切った。男子100メートルには、山縣亮太(セイコー、広島・修道高出)が出場を予定しているが、私は違う選手に注目している。男子110メートル障害で4度目の日本王者を目指す高山峻野(ゼンリン、広島工大高出)。同種目の日本記録保持者である。
 会場のデンカビッグスワンスタジアム(新潟市)は、高山にとって何かと縁のある場所だ。彼が初めてこのトラックに立ったのは、8年前の2012年8月。優勝候補と騒がれて臨んだインターハイだった。持ちタイムは出場選手中トップ。しかし、結果は予選で転倒し、途中棄権に終わった。このレースをきっかけに、高山は取材に対し、大きなことを言わなくなったという。自分で自分に重圧をかけない方法を学んだのだ。
 2度目は、それから3年後の15年6月。舞台は日本選手権に変わっていた。持ちタイムは出場22人中18位。ところが、期待されない高山は速かった。自己新記録で予選を突破すると、その勢いで決勝を制した。「どうして自分が1番になったのかわからない」と、報道陣をけむに巻いた初優勝。このレースをきっかけに、高山は世界舞台へと一気に駆け上がっていくことになる。
 悔しさと喜びを知った新潟での3度目のレース。この日本選手権で、高山はどんな思いをかみしめることになるのだろう。周囲を驚かせるような快走を期待して、いや、期待しないほうが高山のためか。そんなことを考えながら、号砲を待つことにする。
(小西晶)

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