運動部デスク日誌

かたずを飲んで見守った10秒

2020/10/3

 おそらく、日本中の多くの人がかたずをのんで見守った10秒だっただろう。2日にあった陸上の日本選手権男子100b決勝。勝ったのは桐生祥秀(日本生命)だった。
 東京五輪1年前での日本最速を決めるレース。例年以上に注目度が高くなったのは、9秒台への期待だ。いま、日本人選手で3人の9秒台スプリンターがいる。選手は9秒台が身近な目標になり、ファンは9秒台が見られる可能性が高まったと感じているのだろう。
 1998年のバンコク・アジア大会。伊東浩司が100b決勝で優勝。速報タイムに競技場が沸いた。「9秒99」。その場にいた私も、身震いが止まらなかった。だが、正式タイムは「10秒00」。それが当時の日本記録。そこからが長い道のりとなった。多くの選手が10秒の壁に挑み、越えられなかった。距離にしてわずか数aだ。桐生が9秒98を出したのは2017年。壁を越えるのに実に19年も要した。
 今回は9秒97の日本記録を持つサニブラウン・ハキームが不在。10秒10を持つ山縣亮太(セイコー、広島・修道高出)も欠場した。本番は東京五輪選考となる来年の日本選手権。2021年シーズンは役者が勢ぞろいし、かつてない群雄割拠の争いが繰り広げられるはずだ。
(下手義樹)


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