運動部デスク日誌

引退セレモニーに思う

2020/11/8

 冷たい雨の中でも、温かい気持ちになった。7日、マツダスタジアムであった広島・石原の引退試合。「19年間、みなさんの支えがあり、幸せな時間を過ごすことができました。本当に本当にありがとうございました」。あいさつは飾らない言葉で淡々と。それでいて、なぜか心に染みた。それも、石原の人柄なのだろう。
 数多くの選手の引退セレモニーを取材してきた。思い出を挙げれば切りがない。引退セレモニーでのあいさつの文章を依頼されたこともある。その選手の野球人生を表現できているだろうか。思いの全てを伝えられているだろうか。記者は文章を書くのが仕事だが、そんな重圧から、なかなか筆は進まなかった。
 旧広島市民球場の時代は、担当記者も選手と一緒にグラウンドに出て、試合後のセレモニーを見ることができた。そのときも緊張して、セレモニーに臨んだ。選手のあいさつが始まる。終わった瞬間、スタンドから大歓声が巻き起こった。涙がこぼれた。私が悩み悩んで選んだ言葉を、その選手は一字一句変えることなく使ってくれた。ただ、うれしかったのだ。
 石原の笑顔をテレビで見ながら、ふと、もの悲しさが胸をよぎった。こんな幸せな野球人生の最後を迎えられる選手は、ほんの一握りにすぎない。秋、球界は別れの季節である。(小西晶)


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