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復活への命の道
冬が近づき、新型コロナウイルスの第3波がささやかれている。経済活動の再開が推進される一方で、医療的な側面から自粛が求められるいびつな状態が続き、どのように行動すればいいのか戸惑っている。
たった今つきつけられている問題を考えつつ、長い人類の歴史の時代ごとの生き方を想像している。人類が飢えや病から逃れ、健康で快適に、豊かに過ごせるように文明や文化が発達してきた。しかし、いつのまにか文明や文化の目的が経済活動、つまりは貨幣価値を生み出せるかどうかに主軸が置かれるようになった。巨大な都市は、その象徴である。経済活動に隷従するかのごとき人々は、健康で豊かに生きるという元来の文明の目的からどんどん遠ざかっていた気がする。
今回のやっかいな未知の伝染病は、文明の元来の目的に立ち戻らせてくれた。皆が健康で安心して過ごすためにはどうしたらいいのか、街のあり方が新しく問われているのだ。
先日、久しぶりに休日の渋谷の街を歩いた。渋谷駅前の忠犬ハチ公像の前の広場は、待ち合わせ場所に選ぶと人が多すぎて出会うことができないこともあった程だが、今はまばらだった。また、満員電車のように混雑していたスクランブル交差点もかなり人数が減っていた。
渋谷駅を最寄り駅とする西武デパートでは、デザインの専門学校である桑沢デザイン研究所の卒業生作品が展示されていた。一つの広いスペースを使うのではなく、エスカレーター周辺の空間や、建物と建物を繋(つな)ぐ通路などの、ちょっとしたスペースを利用した展示である。本来であれば2月末に渋谷にある校舎内で展示されるはずだった卒業生作品展の一部が、11月3日から23日にかけて展示されていたのだ。「デザインは死なない。 New羅針盤」というタイトルがついていて、とても感慨深い。すべての人工物には、人間の考案したデザインが施されている。長い人類の歴史とデザインは、変遷しながら並走し、生き続けている。変遷の中の「今」の一部が、ここにあるのだと思った。
絵画やオブジェ、洋服やアクセサリー、日用品のパッケージなど、それぞれの感性を託した作品が、デパートの様々な商品と共鳴するように、片隅で存在をアピールしていた。感染防止目的もあり、作品はすべて触れることはできず、冊子の内容などを映像で流すなどしていた。
コロナ禍でどのように文化を復活させるか、という点においても知恵と工夫と尽力が求められる。そのこともまた、この時代の文明や文化の記憶となることだろう。
あかあかと一本(いっぽん)の道(みち)とほりたりたまきはる我(わ)が命(いのち)なりけり
斎藤茂吉
「たまきはる」は「命」にかかる枕詞、自分の人生を一本の道に例えている。すべての命がそれぞれの「一本の道」を生きている、という普遍性につながる一首である。この歌を胸に灯しつつ、不安な今年の冬への道を歩きたい。
(歌人・作家)
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