カープ

<1>野村謙二郎

2020/4/30

 ▽燃えるチームリーダー

 他人に厳しく、自分にはより厳しい。野村謙二郎はライバルや対戦相手だけでなく、己自身に対して闘争心を燃やした。「野村が泥だらけで頑張っているから、僕も頑張ろう。見る人たちに、そう思ってもらえる選手であり続けたい」。背番号7で戦った17年、ひたすら熱く駆け抜けた。

 打って、守って、走って、叫んで、時には仲間を叱り飛ばした。「すべて勝つためなんだよ」。勝利のためならば、率先して嫌われ者にもなる。そんな究極の自己犠牲精神を若き日から発揮し、気付けばチームリーダーと呼ばれていた。

 勝利を求めて泥くさく積み上げた数字は、野村を華やかなスターへ押し上げた。入団6年目の1994年までにリーグ最多安打は2度、盗塁王は3度獲得。球団記録(当時)のシーズン173安打で3度目のリーグ最多安打に輝いた95年は、打率3割1分5厘、32本塁打、30盗塁をマーク。セでは45年ぶりとなる「トリプルスリー」を達成した。

 打てて、一発があり、果敢に走れる。28歳の野村は「大リーグに最も近い野手」と評価された。2年後の97年にメジャー新球団の誘いを受け、フリーエージェント(FA)権を獲得。日本人野手では初となる大リーグ移籍へ、挑戦の炎は燃え盛るとともに、激しく揺らいでもいた。熟考した末、シーズン終了直後に広島残留を表明した。「勝ちたい」―。そこには栄誉や名声ではなく、「カープで」という条件が欠かせなかった。

 2000年の開幕直後に左太ももを肉離れして以降は、大きなけがの繰り返し。衰える肉体との闘いを支えたのは、通算2千安打という大記録だった。自費製作した「カウントダウンTシャツ」のプレゼントを04年、残り143本で始める。1安打すれば、10枚の赤いTシャツがファンの手元へ届く。誰かを励まし続けた男は、誰かが喜ぶ姿を励みに一歩ずつ前進。生え抜きでは衣笠祥雄と山本浩二に続く、球団3人目の偉業へたどり着いた。

 05年秋、赤く染まった広島市民球場の引退試合で「野球はいいもんだぞ。野球は楽しいぞ」とあいさつ。ふと目に入った少年の姿に、湧き上がる感情を言葉に乗せた。「寂しさの裏返しだろうね。僕自身はもう、野球選手として戦うことはできなくなるのだから」。次代を担う子供たちを温かく励まし、プレーヤーとしての歩みを止めた。(山本修)

 のむら・けんじろう 1966年生まれ。大分・佐伯鶴城高、駒大を経て89年にドラフト1位で入団。2年目から遊撃に定着して看板選手となり、3度のベストナイン、1度のゴールデングラブ賞に輝く。通算2000安打を遂げた2005年に引退。通算成績は打率2割8分5厘、2020安打、169本塁打、765打点、250盗塁。10年から5年間監督を務め、13年に初のクライマックスシリーズ進出を果たした。

    ◇

 創立70周年を迎えた広島は、ナインのひたむきな一投一打がファンの心を震わせてきた。2000年以降は低迷が長引き、新たな本拠地で力を蓄え、球団初のリーグ3連覇を遂げた。カープの「近代史」を支えてきた選手を紹介する。

 ※1950〜90年代に活躍した選手の「よみがえる熱球 アーカイブ編」はこちら


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  • プレーと言葉に勝利への執念をにじませ、ナインを鼓舞し続けた野村

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