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大学への道、田舎は不利? 英語の民間試験の成績、入試に活用

2018/5/2 0:00
高校1年生向けに新設した「英語4技能講座」について話し合う学習塾スタッフ(撮影・福井宏史)

高校1年生向けに新設した「英語4技能講座」について話し合う学習塾スタッフ(撮影・福井宏史)

 2020年度の大学入試から、センター試験は「共通テスト」へ衣替えする。英語では「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るため、TOEICや英検など民間の検定試験の成績が活用されることになった。これが波紋を呼んでいる。「田舎に住んでいたら不利だ」。広島県安芸太田町の加計高に通う1年男子(15)はつぶやいた。

 ▽地域・経済格差、懸念も

 新しい入試制度に移行する最初の学年。乗り遅れないか、不安が付きまとう。民間試験の最寄りの会場は広島市。車で片道1時間はかかる。「簡単には受けられない。都会の子よりもチャンスが少ない気がして…」

 共通テストでは、3年の4〜12月に民間試験を受け、2回分の成績を志望大学へ提出する。生徒は「3年になる前から何度か受けて慣れておきたい。チャンスがあるだけ受けたい」と思う。心がはやる一方で、複雑な気持ちが芽生える。

 費用は安くても5千円台。2万円超の試験もある。交通費もかさみそうだ。親の経済的な負担を思うと、そう何度も受けられるだろうか―。

 ▽導入を疑問視

 この生徒の迷いを代弁するかのような声も、編集局に寄せられた。元英語教諭、岡本政治さん(71)=廿日市市=は「地域格差と経済格差。二つの格差が子どもの可能性を狭めかねない」と民間試験の導入を疑問視する。さらに「教員が困惑している」とも。

 実際、広島市内のある英語教員は「とにかく情報不足」と打ち明ける。対象となる民間試験は8種類で、3月に公表されたばかり。20〜23年度は移行措置として、大学入試センターの試験も残る。

 では各大学は、このうちどれを学生選抜に採用するのか。ほとんどが方針を明らかにしていない。県内の国公立大も、いずれも「検討中」という。出題内容や採点方法が異なる民間試験の成績をどう扱うのか、判断に時間を要しているようだ。

 それだけに教員は「どの試験に照準を合わせて準備させるべきか。正直分からない」と語る。ターゲットを絞っても、生徒の志望大学が採用しないかもしれない。難易度が高過ぎて対策が難しい試験もある。

 ▽塾は講座新設

 このような変化を敏感に受け止め、準備を進めるのが学習塾だ。県内各地に教室を持つ東進衛星予備校は3月、「英語4技能講座」と銘打つ新プログラムを導入した。英検対策講座を新設した塾も複数ある。

 だが、ここにも経済格差が付きまとう。元教諭の岡本さんは語気を強めた。「どの子も等しく学ぶ機会と挑戦する機会を得られるよう、今回の入試改革を注視する必要がある」(奥田美奈子)

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