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イノシシ目撃、なぜ増加 捕獲数ほぼ一定、開発の影響で越境か

2018/5/11 0:00
相次ぐイノシシ被害を受け、対策を強化した団地内の菜園を見回る松下さん(広島市西区の共立ハイツ)

相次ぐイノシシ被害を受け、対策を強化した団地内の菜園を見回る松下さん(広島市西区の共立ハイツ)

 イノシシが広島市西区己斐上の住宅地で住民に目撃され、その後、市中心部の原爆ドーム(中区)や広島城(同)周辺を駆け回る騒動が4月25日に発生。多くの警察官たちが出動する大捕物となった。

 「夜、よく自宅近くの道路をイノシシが歩いている。怖い」。今回、最初に目撃された住宅地近くの会社員女性(33)から寄せられた声を頼りに西区の山裾を歩いた。公園や草むらのあちこちに、動物が掘り返したような跡を見つけた。イノシシの仕業なのか。

 3年ほど前からイノシシの目撃が増えた西区己斐上の団地「共立ハイツ」。昨年11月、菜園にしていた40坪ほどの庭を荒らされた小久保裕美さん(70)は「朝起きたらびっくり。庭が全部掘り返され、植木鉢もレモンの木も倒されていたのよ」。40年以上住んでいて初めてと、身ぶり手ぶりで振り返る。

 ▽出没情報を通知

 「堆肥に残飯を使っている菜園や、玄関や車庫に柵をしていない庭はすぐ狙われるんよ」と、前町内会長の松下輝雄さん(67)。町内会は、小中学生の保護者にイノシシの出没情報をメールし、掲示板で注意を促している。

 イノシシに関する相談件数は、この5年間で約2倍に増えた。市農林整備課によると、2017年度は集計のまとまった1月末現在で493件と、前年度の555件を上回るペースだ。このうち西区は16年度248件、17年度(1月末現在)は171件と、ともに市内全8区の中で最も多い。山際を開発した住宅地では、花壇や菜園の被害、通学路への出没に関する相談が目立つ。

 ▽「すみか追われ」

 ただ、この現象が必ずしも生息数の増加を示すわけではないという。半世紀以上にわたり市近郊の山を歩いた県猟友会会長の国武訓扶衛さん(71)=西区=は「周辺の山の開発ですみかを追われたイノシシが住宅地に下りてきているだけだ」とみる。佐伯区で商業地開発が本格化したことも、山を東側に越えた西区の住宅地での目撃が増えた一因と推測する。

 有害鳥獣としての市内でのイノシシ捕獲は16年度1527頭。ここ5年は1100〜1800頭台で大幅な増減は見られない。

 農業被害が深刻な山間部では、山林と農地の境目に柵を設け、野生動物の餌になる農作物を実ったまま放置しないよう集落で呼び掛けている。一方、都市部は地域ごとの対策が進んでいない。市は18年度、町内会の有害鳥獣害対策に上限20万円の補助を始める。都市部でも家庭菜園や生ごみの管理を促す考えだ。

 実際、イノシシに出合った場合どう対処したらよいのか、市安佐動物公園(安佐北区)の畑瀬淳さん(53)に聞いた。「本来、警戒心が強い動物なので人に気付くと逃げる。ただ突然、人と鉢合わせると驚いて暴れる恐れがある」。危険を感じた時は柵のある玄関ポーチに隠れたり、1メートル以上の高さのある塀に登ったりするよう呼び掛けている。

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