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進学前から「希望格差」 貧困の連鎖、選択肢奪う

2018/5/15 0:00
手帳に書き込まれたアルバイトの予定を確認する少女(画像の一部を修整しています)

手帳に書き込まれたアルバイトの予定を確認する少女(画像の一部を修整しています)

 日本では7人に1人の子どもが貧困の中で生きている。だが、実情は見えづらい。さまざまな困り事に直面しても、誰にも相談できずに一人で思い悩む子どもは少なくない。アルバイトで家計を助ける広島県熊野町の少女(17)も、進路について悩んでいた。こんな言葉を口にした。「いつの間にか、諦める癖がついた…」

 少女は高校3年生。両親は離婚し、母(50)と高校1年生の弟(15)と暮らす。生活保護費や母のパート収入で、生活費は月17万円ほど。家計を助けるため、少女は昨夏から週3〜4日、放課後に地元の飲食店でアルバイトに励む。

 ▽バイトで生活費

 午後6時から10時まで働く。毎日の昼食代など自分の生活費はバイト代から出している。3月は弟の高校入学金や制服代の支払いがあり、家計はピンチだった。だから自分の教科書代1万5千円も工面した。

 疲れて、時に学校を休んだり、授業中に寝てしまったりもする。それでも勉強と両立させてきた。大学進学という目標がある。理学療法士になる夢が。

 だが今、高校3年になり気持ちが揺れ始めた。学費が払えるか、奨学金を返していけるだろうか―。17歳ながら、社会の厳しさは身をもって知っているつもりだ。「母に負担をかけたくないし、考えると面倒くさくなって。だからもう諦めようかな、その方が楽だなって思ってしまう」

 少女の話を聞きながら「希望格差」という言葉が浮かんだ。貧困であるがゆえに学ぶ機会を損ない、将来の希望が持ちにくくなる。それは進路の選択肢を狭め、貧困の再生産につながりかねない。子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人あすのば(東京)が昨秋、支援の対象とする547人の子どもに行った調査からも実情がうかがえる。約6割が経済的理由で「塾や習い事を諦めた」という。

 ▽奨学金に尻込み

 実際、生活保護世帯の子どもの大学、専修学校への進学率は33・1%(2016年)。全世帯の73・2%に比べ大きな差がある。少女のように、貸与型の奨学金の利用を尻込みするケースは少なくない。

 政府は2017年度から給付型の奨学金制度を始めたが、対象は限定的だ。1学年につき約2万人に毎月2万〜4万円が支給されるが、成績に加え部活動などが考慮される。困窮する生徒はアルバイトが多忙で部活ができず、不利とされる。広島県は本年度、大学などへの進学時の給付型奨学金を導入する予定だが、同様の制度を自治体が設けるのは全国的にも珍しい。

 子どもの貧困に詳しい広島大大学院の佐々木宏准教授(福祉社会学)は「教育を受ける平等は、社会の課題。世界的な水準からすれば、まだまだ日本は子どもの教育への支出が足りない」と強調する。「大学教育の負担軽減についても、もっと国民的合意が必要だ」

 家庭の経済状況に左右されず、本人の能力や意欲に応じた大学進学の機会を―。それは未来への投資とも言えそうだ。一方で、「家庭の責任」という声も根強くある。皆さんはどんな意見をお持ちだろうか。(ラン暁雨)

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