児童見守り、どう継続 新潟女児殺害でボランティアにも衝撃
小学2年女児が殺害された新潟市の事件は、登下校の児童を見守る広島市内のボランティアにも衝撃を与えた。安佐北区の無職男性(79)は「頑張らなければと思うが、住民が高齢化して通学路に立てる人は減っている。どうすれば子どもの安全を守れるのか」と編集局に声を寄せた。
この男性が役員を務める見守りグループは2004年に90人で発足したが、いまは約70人。「高齢でやめたいと言ってくる人ばかり。引き留めるので精いっぱい」。自身も腰を痛め「いざというときに子どもを守れる自信がない」と漏らす。
▽60歳以上が8割
広島県警生活安全総務課によると、県内の防犯ボランティアは、05年に安芸区で起きた小1女児殺害を受けて急増。ピークの10年には5万1854人を数えたが、その後は減少傾向にある。17年はピーク時より約1万人少ない4万1917人。うち8割が60歳以上だ。
全国子ども見守りボランティア協議会(金沢市)の平寿彦代表理事(71)によると、担い手不足は全国的な課題という。「学年ごとに下校時間帯が違い、見守りは一日2時間かかる重労働。高齢者に雨の日も風の日も歯を食いしばってやれ、とはこれ以上は言えない」
担い手を増やす鍵はあるのか。会員数650人を誇る佐伯区八幡東学区の「イエローレモン隊」の中谷克己隊長(52)に尋ねた。「毎日通学路に立つ隊員がいる一方で、都合のつく日、時間帯だけでもOK」。活動を継続するには、住民の負担感を減らすことが大事なようだ。
同学区では、買い物の行き帰りに「防犯パトロール中」と記したバッグを提げて歩く人も目立つ。中谷隊長は「防犯意識の高さを見せつけ、犯罪者が寄りつきにくい街にしたい」と狙いを語る。
防犯に詳しい福山大の平伸二教授(犯罪心理学)は、限られた人数で効率的に児童を守るための工夫を説く。下校時に1人になるルートに人を置く▽死角を減らすため草刈りをし、路上駐車を減らす▽防犯カメラや「カメラ稼働中」の看板も有効に使う―などだ。
▽「外出が監視に」
その上で、多くの人ができる範囲で見守りに携わることが大事という。「例えば、下校する午後3〜6時に住民ができるだけ屋外に出るようにすれば、それだけで不審者監視になる。買い物や散歩、庭の手入れなど何でもいい」と助言する。
長年続けることにも意味があると強調する。「役立っている実感が薄い人もいるはず。でも、10年続ければ子どもは20歳。大学で学生に聞くと『見守ってもらった』と覚えている」と平教授は言う。
市内では、広島経済大(安佐南区)の学生や山陽高(西区)の野球部員が、近くの小学校の通学路に立っている。平教授は「見守られた子たちが親になり、子どもを見守る側に回る循環が生まれたら、将来の地域の安全につながる」と力を込める。
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