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生活保護減額どこまで 半年後から段階的見直し

2018/5/29 0:00
狭い台所で、食事の準備をする生活保護の受給者(撮影・高橋洋史)

狭い台所で、食事の準備をする生活保護の受給者(撮影・高橋洋史)

 生活保護費が10月、見直される。中国地方では約4万9千世帯が、今後3年間で段階的に最大5%の減額となる。国の財政難が続く中、切り下げやむなしとの意見もあるが、受給者からは「これ以上削られると限界」との悲痛な声が漏れる。

 ▽貧困対策に逆行 指摘も

 前日のみそ汁の残りに、ご飯を入れたおじやを口に流し込む。9年前から生活保護を受ける無職男性(86)=広島県安芸郡。日の当たらない古びたアパートの一室で独り暮らしだ。エアコンもテレビもない。

 保護費と年金で1カ月の生活費は計約7万1千円。1日に使える金額を千円以内と決め、衣類は年に何枚か下着を買うだけ。ガス代がかさむためシャワーで済ませる。「風呂には、1年以上入っとらんよ」

 10月以降、保護費は段階的に月3500円程度減る見通しという。「1日当たり150円を切り詰めんといけん。これ以上、何を削れば…」。ため息は深い。

 今回、カットされるのは食費や光熱費に充てる「生活扶助費」だ。5年に1度、経済状況を踏まえて見直す仕組みで、受給世帯の3分の2が影響を受ける。地域や世帯数により削減幅は異なり、広島市の場合、40代夫婦と中学生、小学生の4人世帯では、現在の月19万9千円が段階的に19万円となる見通しだ。

 ▽議論呼ぶ算定法

 こうした中、削減の根拠となる「水準均衡方式」という算定法が議論を呼んでいる。生活扶助費を、年収下位10%の消費水準に合わせる仕組みだ。

 税金を投入する生活保護世帯が一般世帯より優遇されないようにとの考え方だが、この下位10%の低所得世帯には、生活保護世帯より低い水準の暮らしなのに保護費をもらわず、基準以下の生活を強いられているケースも多いという。本来なら受給できる世帯まで10%に含まれており、「この算定法では、際限なく減額される負のスパイラルに陥る」との指摘がある。

 さらに、「切り下げは、生活保護の受給世帯以外の一般世帯にも影響する」との懸念も聞かれる。多くの福祉制度が生活保護費を参考に支給対象を決めているためだ。

 ▽就学援助に影響

 厚生労働省は、高校生の奨学金や国民保険料の減免など「47の制度に影響が及ぶ可能性がある」と明かす。特に影響が指摘されるのは、低所得者の子どもに給食費や学用品代を支給する「就学援助」。地方自治体の単独事業で、財政規模の小さな自治体では対象が狭まる見通しだ。

 生活保護費の切り下げが近年続いていることについて、「国が進める子育て世帯への貧困対策にも逆行する」と、広島市西区の秋田智佳子弁護士(51)は指摘する。「憲法が定める『健康で文化的な最低限度の生活』が保障できる額なのか検証し、立ち戻って考えるべきだ」(東海右佐衛門直柄)

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