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禁止でも通る「勝手踏切」 可部線隙間から横断、列車と接触事故

2018/6/25 0:00
4月30日に男性と列車の接触事故が起きた「勝手踏切」。事故後も横断する人が後を絶たない

4月30日に男性と列車の接触事故が起きた「勝手踏切」。事故後も横断する人が後を絶たない

 広島市安佐南区長束地区のJR可部線安芸長束―下祇園間で4月末、線路を横断中の男性が列車と接触し、重傷を負った。現場は、遮断機や警報機はないが、フェンスなどはなく通り抜けができる、いわゆる「勝手踏切」。事故を受けてJRは6月中の閉鎖方針を地元に伝えた。現場へ取材に行くと、住民からは「高齢者には欠かせないのに…」と困惑の声が聞こえてきた。どう解決すればいいのか。

 事故が起きたのは、線路沿いに続くフェンスが1メートルほど途切れた勝手踏切。記者が平日の午前7時ごろから立っていると、まもなく70代の主婦がやって来た。「足腰の弱い高齢者にとっては欠かせない生活道なんです」。線路を挟んだ向かいの地区にあるスーパーへの近道としてほぼ毎日通るという女性にとって、JRの閉鎖方針は唐突と映る。

 ▽全体で数百カ所

 現場の南北に2カ所ある正規の踏切までは約70〜120メートルある。記者が現場にいた約1時間半の間、線路をまたいで渡る人が10〜15分おきに現れた。行き先の多くは、約150メートル先にあるバス停。約10分間隔でバスが来る。自転車をかついで通り抜ける高齢男性も見掛けた。「危ないですよ」と声を掛けると「回り道は面倒」との答えが返ってきた。

 勝手踏切は、線路敷設前から生活道だった所が多い。JR西日本広島支社によると、全15・6キロの可部線には少なくとも数百カ所ある。今回の事故が起きた長束地区の勝手踏切も、明治期の線路敷設前には「里道(りどう)」と呼ばれる古くからの生活道路だった実態を踏まえ、封鎖されてこなかった経緯がある。

 JR側は通常、看板などで立ち入り禁止を呼び掛け、事故などが発生して危険と判断した場合には住民の同意を得て閉鎖している。ただ、「住民の同意はなかなか得られない」と同支社。昨年度に閉鎖できたのは東広島市内の山陽線の1カ所だけだった。

 ▽摩擦生む場合も

 全国では住民の理解を得ないまま閉鎖した結果、摩擦を生んだケースもある。京都府宇治市のJR奈良線では、高齢者の死亡事故などを受けて計5カ所を16年に閉鎖したが、地元は「説明が不十分」などと反発。JR側に正規の踏切設置を求め続けている。

 今回の事故現場はどうなるのか―。線路の両側のフェンスに張り出された文書には「6月に柵の設置を予定しています」とある。JR側は地元の自治会と話し合いを続けているが、同意は得られていない。閉鎖時期の延期も視野に入れている。

 広島大大学院国際協力研究科の藤原章正教授(交通工学)は「事故が起きれば人命に関わるだけでなく、広い範囲で利用者に影響が生じる。住民が事故の重大性を理解することが大切で、JR側にも丁寧な説明が求められる。双方がよく話し合い、最適な対応を探るべきだろう」としている。

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