コラム・連載・特集

被災地の姿、ここにも 「温品地区の被害も知ってほしい」

2018/7/17 0:00
府中大川の護岸が道路とともに崩落した現場。応急工事を急ぐ(15日)

府中大川の護岸が道路とともに崩落した現場。応急工事を急ぐ(15日)

 「被害の大きな地域に焦点が当たる。温品地区(広島市東区)の被害も知ってほしい」。電話口で匿名の男性はそう訴えた。早速、安佐北区可部の安佐北支局から車で急行した。寸断された生活道路、削り取られた護岸―。確かにここにも西日本豪雨の被災地があった。

 カーナビゲーションを頼りに向かった。景色を見る限り、沿道は日常を取り戻している。しかし、温品小の手前に差し掛かると、市道の一部が護岸ごと、府中大川に削り取られていた。回り道して、さらに上流を目指す。

 ▽護岸が40メートル崩落

 行き着いた石原田団地では、護岸が高さ約10メートル、幅約40メートルにわたり崩落していた。土台を削られ、斜面ぎりぎりで踏みとどまった民家も確認できる。

 近くに住む西本栄子さん(75)は6日夜の恐怖をこう語る。「ビリビリっとガードレールが剥がれ落ちる音が響いた」。崩落で周辺の約10軒は人も車も一時、出入りできなくなった。

 住民が力を合わせ、民家の隙間や庭を伝う通路を確保した。途中にある塀は高さ約2メートル。はしごで上り下りした。子どもにとって危険な上、荷物を持っては越えられない。近くの会社員男性(27)が知人に依頼して金属製の階段を急きょ設けた。男性は「でも道路が直らないと車を出せない」とこぼす。

 ▽「作業休みなし」

 崩落現場では、県が10日から応急工事を始めた。重機3台で土のうを積む。歩いて通れる状態にするまで、工事はまだ半ばだ。「作業員は休みなしで頑張っとるんですが…」。現場監督の男性(55)は声を絞り出した。

 「作業員や重機、材料は被災地で取り合いだ。広域多発が、復旧の進み具合に影響している」と明かす。

 この現場を写真に収める男性がいた。約350メートル南西に住む藤本信之さん(63)だ。

 自宅前の応急工事はまだ、始まってもいない。この現場が終われば自宅前でも始まると聞き、進み具合を毎日撮影する。

 「他地域に比べたら、温品地区は被害が小さいので言いづらいのだが」と藤本さん。「今後、台風などに襲われれば自宅前の道はさらに崩れる。せめて土のうを何個かでも置いてほしい」と焦る。

 「行政から何も説明がないから不安が募る。日程の見通しだけでも教えてほしい」と付け加えた。

 現場で聞いた声を、県西部建設事務所にぶつけた。担当者は「緊急性の高い箇所から取り掛かっている。県全体が被災し建設業者が足りない」と率直に明かした。

 匿名電話の主には結局、たどり着けなかった。それでも、「知られざる被災地」がまだ数多くあることをあらためて実感させられた。(山田英和、写真も)

この記事の写真

  • 応急工事が始まらない自宅前の崩落現場を案内する藤本さん(手前)たち(15日)

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 「こちら編集局です あなたの声から」では、みなさんが日ごろ「なぜ?」「おかしい」と感じている疑問やお困りごとなどを募っています。その「声」を糸口に、記者が取材し、記事を通じて実態や話題に迫ります。以下のいずれかの方法で、ご要望や情報をお寄せください。

  • LINE公式アカウント

    LINE友だち登録またはQRコードから友だちになってトークをしてください
  • 郵送

    〒730-8677
    広島市中区土橋町7-1
    中国新聞社
    「こちら編集局です」係

    ファクス

    中国新聞編集局
    「こちら編集局です」係
    082-236-2321
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

こちら編集局です あなたの声からの最新記事
一覧

パートナー社

  • 中国新聞「こちら編集局です あなたの声から」は、双方向型の調査報道に取り組む全国のパートナー社と連携協定を結んでいます。記事をお互いの紙面やウェブサイトに掲載したり、情報の取り扱いを十分に注意した上で取材・調査テーマを共有したりします。地域に根を張るローカルメディアがつながり、より深く真相に迫っていきます。

北海道新聞 東奥日報 岩手日報 河北新報 新潟日報 東京新聞 信濃毎日新聞 中日新聞東海本社 岐阜新聞 京都新聞 神戸新聞 まいどなニュース 徳島新聞 西日本新聞 琉球新報