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外国人避難 言葉の壁 「被災したブラジル人を知っている」

2018/8/5 0:00
自宅前の坂道で、避難時の様子を振り返るヒガさん(左から2人目)

自宅前の坂道で、避難時の様子を振り返るヒガさん(左から2人目)

孤立防止へ 日々交流を

 西日本豪雨のさなか、外国人は安全に避難できたのだろうか―。7月半ばに「こちら編集局です」で問題提起したところ、海田町の住民から「被災したブラジル人を知っている」との情報が寄せられた。あの日の行動を教えてもらおうと、本人から話を聞いた。

 「本当に危なかったです」。同町畝2丁目のブラジル人の主婦ヒガ・ダルバさん(55)は顔をこわばらせた。

日本語分からず

 6日夜、たたき付ける雨の音におびえ、家族で身を寄せ合った。外のスピーカーから何かアナウンスが聞こえてきたが、日本語が分からない。状況が読み取れず、身動きが取れなかった。

 ドアを激しくたたく音が聞こえた。隣家の友人が訪ねてきて「大変なことが起きているよ!」と教えてくれた。日本語で書かれた緊急速報メールの文面を翻訳サイトで調べたという。一家や近隣のブラジル人18人が避難を始めたのは午後7時半ごろ。気象庁が県内に大雨特別警報を出す10分前だった。

 胸まで泥水に漬かり流されそうになる中、手を取り合って歩いた。約2キロ先の避難所の海田公民館にたどり着いたのは、午後9時ごろだった。

 避難所でも18人は一固まりになって過ごした。3日後、家に帰る人が出始めたのを見て、自分たちも避難所を出たという。

 同町は同日午後4時35分、土砂災害の「避難準備・高齢者等避難開始」を発令。同5時35分には避難勧告、6時20分には避難指示を出していた。そのたびメール、防災行政無線、ファクス、広報車で避難を呼び掛けたが、発信は全て日本語のみだった。

「必要性は認識」

 町災害対策本部は「日本語以外で情報を発信する必要性は認識していた」とする。2015年の国勢調査によると、同町には人口の2・4%を占める679人の外国人が暮らす。ただ、ある職員は「あの状況下で外国語で情報を流すところまで手が回らなかった」と打ち明ける。

 他の自治体もほぼ同様の対応だった。広島市も6日夜、無線やメールなどで避難を呼び掛けたが、全て日本語のみだった。

 内閣府の避難勧告に関するガイドラインでは、配慮すべき事項として「多言語による情報提供」がある。しかし、多くの自治体がそこまで手が回っていないのが実情のようだ。

 ヒガさんの話から、地域の中で孤立する不安が伝わってきた。ある日本人住民は「彼らをどうやって助けていいか分からなかった。言葉が通じなくてもジェスチャーなどで危険を伝えることはできたはずなのに、ためらった」と悔やむ。

 外国人の防災教育に詳しい静岡大の藤井基貴准教授(防災教育)は「外国人を災害弱者にしないためには、行政に頼るだけでは駄目。日本人と外国人が夏祭りなどの行事を通じて、日常的に防災や避難の意識を共有することが大切」と指摘。「外国語が不安でもコミュニケーションは取れる。毎日のあいさつからでいい。いざというときに頼りあえる関係を築いてほしい」(松本輝)

声 西日本豪雨の被災者の皆さん、困っていること、伝えたいことを聞かせてください。
  エールなども歓迎します。不安や疑問の解消に向け、ともに考えましょう。
  ファクス 082(236)2321
  メール kochira@chugoku-np.co.jp

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