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裁判所、開放性か安全か 全国で事件、検査導入の流れ

2018/11/14 0:00
広島簡裁と地裁、高裁の庁舎の入り口に設置されているゲート式金属探知機と手荷物検査機

広島簡裁と地裁、高裁の庁舎の入り口に設置されているゲート式金属探知機と手荷物検査機

 「裁判の傍聴に行ったら、入り口で金属探知機で検査をされた。初めてのことで驚き、プライバシーの侵害と思った。なぜ検査を始めたのか調査してほしい」。広島市中区にある広島地裁を訪れた市民から、編集局に疑問の声が電話で寄せられた。検査を始めた経緯を裁判所に取材した。

 電話をかけてきたのは、2年ほど前から週1回程度、裁判の傍聴を続ける西区の会社経営男性(59)。10月2日、民事裁判を傍聴しようと正面入り口から地裁の庁舎に入ろうとした際、警備員から手荷物検査を求められた。ポケットから財布や車の鍵を出してエックス線検査機に通し、自分自身は金属探知機のゲートをくぐった。

 検査は1分ほどで済んだが「『開かれた裁判所』の理念に反するのではないか。これまでのように気軽に裁判所に来ることができなくなる」と指摘する。

 全国の裁判所を束ねる最高裁広報課によると、検査が始まったのは、法廷の安全が脅かされる事件が昨年、全国の裁判所で相次いだのがきっかけという。

 ▽被告が切り付け

 昨年2月、大阪地裁であった裁判員裁判の法廷に被告が包丁を持ち込んだ。同年6月には仙台地裁の法廷で判決言い渡し後、被告が突然、隠し持っていた刃物で傍聴に来ていた警察官2人の顔や背中などを切り付ける事件が発生。いずれも被告は保釈中で、裁判所による手荷物検査はなかった。

 このため最高裁は同年6月、手荷物検査を積極的に取り入れるよう全国の地裁と高裁に通知。金属探知機などによる検査は東京、福岡など全国の4庁舎で実施しているだけだったが、その後は最高裁のほか仙台、名古屋、大阪など全国8カ所の地裁や高裁が次々に導入した。広島も、簡裁、地裁、高裁が同居する庁舎で今年10月から取り入れた。

 ▽「開かれた場を」

 一方で、仙台弁護士会は「裁判所は市民に開かれた場所であるべきで、一律に手荷物検査をしない方法に変えてほしい」などとする意見書を導入前に仙台地、高裁に提出。札幌でも一部の弁護士事務所が手荷物検査の撤回を求める書面を札幌高裁に送った。

 最高裁広報課は「安心して裁判所を利用するため、庁舎内の安全を確保することは重要な責務」と理解を求める。今回、編集局に調査を求めた男性は「相談やパンフレットを取りに来るだけの人もいるはず。手荷物検査は各法廷の入り口で行うなど、裁判所の開放性を確保してほしい」と求めている。(松本輝)

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