旧湯来町、広島市なのに市外局番0829
「広島市なんだから082でいいじゃないですか」。今月受け付けを始めた無料通信アプリLINE(ライン)を使って早速、市外局番についてのこんな不満が寄せられた。広島市佐伯区湯来町の40代男性からだ。平成の大合併で、佐伯郡湯来町が広島市に編入されたのは2005年。「随分たつが自宅の固定電話は0829のまま」と嘆く。なぜなのか、調べてみた。
男性は「一体感もないし不便」と嘆く。料金もやや割高だ。NTT西日本の料金体系では、0829エリアへの通話は3分8・5円だが、同じ広島市でも082エリアへは3分20円になる。
旧湯来町に当たる地域では0829の他に0826も使われていて、確かに一体感はない。「編入時に市外局番も統一すればいいのでは」。市外局番を管理する総務省の中国総合通信局(中区)を訪ね、電気通信事業課の阪口郁昭・上席企画監理官に聞くと即座に答えが返ってきた。「合併の事実だけでは変更できません」
▽議論まとまらず
自治体からの要望が必要で、その前提として住民全員の合意が要るという。商工会や自治会など地域の主要団体全てからの同意書などで「住民の総意」と見なすとのこと。市外局番を変えるのは想像以上に大変な作業らしい。
旧湯来町でも、082に変えるために活発に議論した時期があったようだ。砂谷地区町内会連合会会長の吉田米治さん(68)によると09年末、住民間の勉強会が始まった。中断を挟んで16年夏まで話し合ったが、結局まとまらなかったという。
反対派からは「看板や名刺類を自費で作り直すのは負担」という意見が出た。高齢者からは「番号が変わるのは煩わしい」という声も。NTT西日本の場合、月額基本料金も0829が082になると100円高くなる。
▽広島県内 他に9地域
旧湯来町のように平成の大合併で自治体名が変わったが、市外局番はそのまま―という地域は、県内に他に9地域ある。生活に密着した通信手段だからこそ、簡単には変更できないのだろう。
旧湯来町での議論は空振りに終わって2年。吉田さんは自身の心の変化をこう語る。「新入りだった合併直後と違い、市外局番が違っても『ここも広島市』と思えるようになった」。それは、固定電話以外に「つながる手段」が急速に浸透したことも、関係しているという。
携帯電話やインターネットで他者とつながる時代。市外局番へのこだわりも薄れていくのかもしれない。だが、局番を見れば地域が分かる世代からすれば、それはそれで寂しい気もする。(新本恭子)
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