呉市、危険認識し放置 「孫の中学、ブロック塀崩れていて心配」
大阪府北部地震で高槻市の小学校のブロック塀が崩れ、女児が死亡した事故から5カ月余り。呉市の女性(64)から「孫の通う阿賀中学の塀も崩れていてとても心配です」というメールが届いた。記者が現場を確認すると、一部は崩れ落ち、鉄筋も入っていないありさま。聞けば1カ月近くも放置されているという。これでは不安を感じないはずがない。
▽豪雨で予算化遅れ
ブロック塀は学校南のグラウンドに面して約200メートル続く。歩道側からの高さは約1・4メートルだが、校庭側からは擁壁部分を含め高さは最大で約3・5メートルにもなる。建設年ははっきりしないが、建築基準法上の違法建築物か法令適用前に建設された既存不適格の施設。どちらにしても危険度は高く、市も改修は予定している。
関係者によると、この壁の一部が崩れているのが見つかったのは10月25日。学校は歩道側に注意を促す張り紙やコーンを設置。校庭側にも規制線を設けて生徒たちが立ち入らないようにした。
▽10ヵ所以上破損
崩れた箇所はブロックが崩れ落ち、広がった隙間からは補強用に入っているはずの鉄筋がない箇所もある。このほかにもひびが入ったり、隙間ができたりと破損した箇所は10カ所以上確認できた。
呉市教委は危険を認識しており、阿賀中も含めて危険なブロック塀の改修や撤去の費用を9月の市議会定例会に予算計上する予定だったが、西日本豪雨の影響で12月以降にずれ込んだとしている。
だが、阿賀中の場合は誰が見ても危険な状態。崩れ落ちそうなブロック塀を、立ち入り規制だけで今後も放置しておくのは保護者ではなくても不安を感じるだろう。女性も「何か起きてからでは遅い。孫には絶対に塀には近づかないように言っている」と早急な対応を望んでいる。
危険なブロック塀の撤去はすでに各地で始まっている。東広島市の黒瀬中は6月末に取り壊した。福山市や周南市でも撤去した。
予算措置していなくても明らかに危険で緊急を要するケースは、市議会の議決を得なくても、専決処分などで対応できる。実際に呉市は西日本豪雨の復旧予算に関しては320億円もの巨費を専決処分している。
▽注意喚起を徹底
早急に対応してこなかった理由について、寺本有伸教育長は「言われる通りすぐ対応すべきだった。申し訳ない。けが人がいないのは幸いだった。注意喚起を徹底していくと同時に、できるだけ早く対応できるようにしたい」と陳謝している。ただ、いつ工事を始められるかを含めて、まだ何も決まっていないという。
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