課題の異臭、浄化効果は 「福山港内港はきれいになったの」
「福山港内港は本当にきれいになったのでしょうか。たまに嫌な臭いが漂ってきます」。内港に面する福山市南手城町の主婦(42)から、こんな声を記者が聞いた。異臭は長年の課題で、市は浄化対策が一定に効果を上げているとする。実際はどうなのか。周辺を歩いた。
▽雨量多いと下水が流入
福山港の入り江の最も奥に位置する内港地区。周辺には住宅、工場、市立大などがある。記者が11月中旬に歩くと、目立った異臭は感じなかった。水鳥や魚も見える。
だが、近くに住む70代女性は「くみ取り式トイレのような臭いがする」とこぼす。「干潮時は特にひどい。夏も風向きの関係でよく臭う」。臭いが発生するときと、しないときがあるようだ。臭いのもとは何なのか。
内港の環境改善に取り組む市環境保全課を訪れた。「雨の日に内港へ流れ込む下水が原因の一つかもしれない」。卜部憲登課長の説明を聞き、驚いた。市中心部は下水道が整備されているはずだ。し尿などを含む下水が内港へ流れ込んでいる―。どういうことなのだろうか。
▽国基準はクリア
市中心部は、汚水と雨水を同じ管で流す「合流式下水道」が整備されている。雨が降って水量が増え、処理施設の能力を超えると、処理前の下水に消毒をしてそのまま流す。放流先が内港で、これが臭いのもととなっているという。
対策も進めてきた。一つは汚れがひどい下水をためてろ過する池の整備。内港に流れ込む汚れは改善前の約3割に減った。もう一つは、下水が流れ込む先の内港のヘドロの改善。環境改善材を底に敷くなどした。広島大の日比野忠史准教授(57)=海岸工学=は「生物もすみ、改善のサイクルができ始めている」と話す。流れ込む下水は国の基準をクリアしている。
▽費用安い合流式
とは言え、雨量が多いと下水が流れ込む根本の仕組みは変わらない。港町町内会の松岡幾男会長(79)=同市港町=は「昔よりは良くなった。だが、流れ込む下水を止めなければ臭いはなくならないのでは」とみる。
下水の方式を変えることはできないのか。市上下水道局は「合流式を分流式に変えるには、莫大(ばくだい)な費用と期間がかかる。現実的に難しい」と話す。合流式のエリアは市中心部の578ヘクタールに及ぶ。
市の公共下水道の工事が始まったのは1953年。合流式は建設コストが安く、当時の一般的な方式だった。広島市などでも合流式が残っている。しかし、し尿などを含む下水が海に流れる仕組みを、いつまで続けるのか。21世紀にふさわしい在り方を探る時期ではないだろうか。
あなたにおすすめの記事
こちら編集局です あなたの声からの最新記事
-
【こちら編集局です】広島県と広島市、公共施設の休・開館の判断は 運営の協議・調整なく (1/18)
▽休館→広島市、コロナ対策で独自基準/開館→県、市民生活への影響最小限に 新型コロナウイルス感染防止対策で、広島市内の図書館など市民に身近な公共施設の運営に関して広島県と市の対応が分かれている。市が...
-
【こちら編集局です】広島県、コロナ集中対策再延長 感染防止強化に理解 時短効果疑問視も (1/14)
広島県が14日、新型コロナウイルスの集中対策期間を2月7日まで再延長する方針を決めた。広島市で国の緊急事態宣言の対象地域に準じた対策を講じ、飲食店への営業時間短縮の要請エリア拡大など、従来より強化す...
-
【こちら編集局です】「安倍氏説明を」多数 政治へ不信感や怒り (12/22)
安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、安倍氏が東京地検特捜部から任意で事情聴取を受けた。編集局は22日、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる読者...
-
【こちら編集局です】Go To停止「遅すぎ」 政府の対応、批判が大半 (12/15)
「中止は当たり前」「判断が遅すぎる」―。菅義偉首相が14日夜、表明した観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止。表明後、編集局が無料通信アプリLINE(ライン)を通じて意見を募ると、約2時...
-
【こちら編集局です】「じわる」若者言葉、まじ「レベち」 SNS世代の新語、考察してみた (12/6)
▽スマホ入力→省略して即レス/他人に同調→あえて断定せず 若者の会話やネットの投稿で、不可思議な言葉に出合うことはありませんか。周囲の親世代からも「あれってどういう意味?」との声が聞こえてくる。調べ...
「こちら編集局です あなたの声から」では、みなさんが日ごろ「なぜ?」「おかしい」と感じている疑問やお困りごとなどを募っています。その「声」を糸口に、記者が取材し、記事を通じて実態や話題に迫ります。以下のいずれかの方法で、ご要望や情報をお寄せください。
LINE公式アカウント
メール
「こちら編集局です」ご意見・情報提供はこちら
郵送
広島市中区土橋町7-1
中国新聞社
「こちら編集局です」係
ファクス
「こちら編集局です」係
082-236-2321