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課題の異臭、浄化効果は 「福山港内港はきれいになったの」

2018/11/24 0:00
周辺に住宅や工場が並ぶ福山港内港地区(中央)

周辺に住宅や工場が並ぶ福山港内港地区(中央)

 「福山港内港は本当にきれいになったのでしょうか。たまに嫌な臭いが漂ってきます」。内港に面する福山市南手城町の主婦(42)から、こんな声を記者が聞いた。異臭は長年の課題で、市は浄化対策が一定に効果を上げているとする。実際はどうなのか。周辺を歩いた。

 ▽雨量多いと下水が流入

 福山港の入り江の最も奥に位置する内港地区。周辺には住宅、工場、市立大などがある。記者が11月中旬に歩くと、目立った異臭は感じなかった。水鳥や魚も見える。

 だが、近くに住む70代女性は「くみ取り式トイレのような臭いがする」とこぼす。「干潮時は特にひどい。夏も風向きの関係でよく臭う」。臭いが発生するときと、しないときがあるようだ。臭いのもとは何なのか。

 内港の環境改善に取り組む市環境保全課を訪れた。「雨の日に内港へ流れ込む下水が原因の一つかもしれない」。卜部憲登課長の説明を聞き、驚いた。市中心部は下水道が整備されているはずだ。し尿などを含む下水が内港へ流れ込んでいる―。どういうことなのだろうか。

 ▽国基準はクリア

 市中心部は、汚水と雨水を同じ管で流す「合流式下水道」が整備されている。雨が降って水量が増え、処理施設の能力を超えると、処理前の下水に消毒をしてそのまま流す。放流先が内港で、これが臭いのもととなっているという。

 対策も進めてきた。一つは汚れがひどい下水をためてろ過する池の整備。内港に流れ込む汚れは改善前の約3割に減った。もう一つは、下水が流れ込む先の内港のヘドロの改善。環境改善材を底に敷くなどした。広島大の日比野忠史准教授(57)=海岸工学=は「生物もすみ、改善のサイクルができ始めている」と話す。流れ込む下水は国の基準をクリアしている。

 ▽費用安い合流式

 とは言え、雨量が多いと下水が流れ込む根本の仕組みは変わらない。港町町内会の松岡幾男会長(79)=同市港町=は「昔よりは良くなった。だが、流れ込む下水を止めなければ臭いはなくならないのでは」とみる。

 下水の方式を変えることはできないのか。市上下水道局は「合流式を分流式に変えるには、莫大(ばくだい)な費用と期間がかかる。現実的に難しい」と話す。合流式のエリアは市中心部の578ヘクタールに及ぶ。

 市の公共下水道の工事が始まったのは1953年。合流式は建設コストが安く、当時の一般的な方式だった。広島市などでも合流式が残っている。しかし、し尿などを含む下水が海に流れる仕組みを、いつまで続けるのか。21世紀にふさわしい在り方を探る時期ではないだろうか。

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