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「広島の県立高 スマホ持ち込み認めて」 県教委は規律重視

2018/11/29 0:01
下校途中、スマホに見入る高校生。今やほとんどの生徒が自分専用の端末を持っている(広島市南区)

下校途中、スマホに見入る高校生。今やほとんどの生徒が自分専用の端末を持っている(広島市南区)

 ▽広島市教委、豪雨受け「容認」

 「県立高も生徒のスマートフォン持ち込みを認めてほしい」。広島県西部の県立高に娘を通わせる呉市のパート女性(46)が、無料通信アプリLINE(ライン)で声を寄せた。広島市教委が持ち込み容認の検討を市立高に促したと報じた13日付本紙の記事を読み、「なぜ県立と市立で対応が違うのか」と納得いかない様子だ。

 「娘はスマホを隠し持って通学している」と明かすこの女性。西日本豪雨の当日、娘の使う路線バスは1時間待っても来なかったが、スマホのおかげで連絡を取り合えた。持ち込みが発覚した同級生は別室指導を受けた、と聞き及び「親が責任を持つので、ルール見直しを」と訴える。

 高校3年の娘が県立高に通う尾道市の会社員男性(51)もLINEで疑問を寄せた。「台風などで危険な時は各自で親に電話を、と学校は言う。でも校内に1台の公衆電話で数百人の全校生徒が連絡できるのか」

 県立高や広島市立高に携帯電話、スマホを持ち込ませない指針ができたのは2009年。長時間利用によるインターネット依存などを懸念し、学校関係者でつくる推進会議が決めた。

 だが、市教委は西日本豪雨を受け、「緊急時や夜の保護者との連絡にスマホは有用」と判断。生徒の95%以上が自分専用の端末を持つ実態も踏まえ、持ち込み容認に転じた。

 一方で県教委は、持病など事情がある場合を除き、持ち込み禁止を貫く。平野剛生徒指導係長は「授業中の規律が乱れたり、ネットを介した犯罪に生徒が巻き込まれたりするリスクを減らしたい」。市教委の方針転換には困惑を隠さない。

 慎重意見は、保護者の間にもある。LINEで意見を寄せた南区のパート女性(41)は「スマホでいつでも連絡できると時間にルーズになる。部活などで遅く帰るなら、先生が親に一斉メールすれば済む」と話す。

 ▽うそつく罪悪感

 ただ、禁止ルールと裏腹に、県立高でもスマホを持ち込む生徒は少なくない。ある教諭は「感触では7、8割は持ち込んでいる。音を鳴らさない限り、とがめない」。県西部の県立高2年女子生徒(17)は「夜の帰り道に怖い思いをした経験もあるので、助けを呼ぶ手段として持っておきたい。でも、先生にうそをつく罪悪感もある」と戸惑う。

 高校生のスマホ利用の実態に詳しい仏教大の原清治教授(教育社会学)は「学校はスマホを巡るトラブルの責任を問われることを恐れている」と指摘。安全面を考えると登下校時の利用は認め、校内では預かる方式が現実的とみる。「保護者や先生の意見を交え、生徒会が自らルールを考えるのも良い」と勧める。

 ▽3県は指針なし

 中国地方の各県教委にも尋ねてみると、山口、島根、鳥取には指針を持たないという。いずれも学校側に判断を委ねており、山口、鳥取は「持ち込みOKが大半」。岡山は、指針に@原則禁止A校内もしくは通常の授業中の使用を禁止―の両論を併記するが、Aを選ぶ高校が8割方だという。

 正解は一つではない、と感じる。ただ、取材した広島県立高のある生徒指導担当教諭の言葉は重く響いた。「世の中には破っていいルールだってある、ばれなきゃいい―。暗にそう教えることになるのが、教育的に一番まずい」

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