詐欺疑い、まず相談 「身に覚えのない料金請求はがき届いた」
「身に覚えのない料金の支払いに関するはがきが自宅に届きました。慌てて連絡してだまされるお年寄りがいるのではないかと思います」。広島市東区のパート従業員の女性(57)から無料通信アプリLINE(ライン)で、はがきの写真が編集局に届いた。調べると、架空の団体を名乗り、裁判費用名目で金をだまし取る架空請求の手口だった。特殊詐欺の一つで今年、中国地方で少なくとも55件、約2億4千万円もの被害が出ていることが分かった。
「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」と題したはがきが女性宅に届いたのは11月20日。女性が利用している契約会社などから契約不履行で民事訴訟を起こされたとし、連絡がなければ原告側の主張が受理され、給与や不動産の差し押さえを強制執行すると記載している。差出人名は「法務省管轄支局 訴訟最終告知通達センター」。取り下げ最終期日は11月21日と書かれ、「03」で始まる問い合わせ先の電話番号も記されている。
女性が編集局に連絡してきたのは、最終期日当日の21日朝。早速、はがきに書かれた電話番号に連絡してみると、コール音が2回鳴った後、「訴訟最終告知通達センターです」と若い男の声。はがきが届いたと伝えると、「ご本人確認のため、お名前をフルネームでお願いします」と丁寧な口調で聞かれた。
▽実在しない団体
女性から相談を受けて連絡したと告げたが、「ご本人さまでないと対応できません」の一点張り。どんな組織かと尋ねると、男性は「はがきに書いてある通り」などと要領を得ない答えを繰り返し、沈黙の間、電話口の向こうで他の人も電話対応しているような声が聞こえてきた。詐欺グループのアジトなのか―。そう思いを巡らせた直後、男性が誰かに指示を受けたのか、「ご本人から電話してください」と声を荒らげ電話を切った。
後日かけ直すも「現在、回線が混み合っています」とのアナウンスが流れるだけ。「法務省管轄支局 訴訟最終告知通達センター」について法務省に電話で問い合わせると「実在しない団体」と回答があった。
▽無作為に郵送か
詐欺と知らず連絡するとどうなるのか。広島県警生活安全総務課の坂本和彦次席は、訴訟の取り下げ名目で弁護士を紹介され、コンビニの電子マネーや収納代行サービスでの着手金の支払いを指示されると説明。支払いに応じると供託金などの名目で追加の支払いを要求されるという。犯行グループは同窓会名簿などから個人情報を入手し、無作為に郵送しているとみる。
県内では今年に入り、同様のはがきによる詐欺の被害が10月末までに24件(被害総額6738万円)発生。中国地方の他県でも岡山で15件(同1億2910万円)▽山口15件(同4690万2千円)▽鳥取1件(同60万円)の被害が出ている。法務省には昨年から電話での相談や問い合わせが増え、今年6月以降、7千件に上った。
坂本次席は「はがきが届いても絶対に連絡しないでほしい。身に覚えのない料金の支払いを求められたらまず家族など身近な人に相談を」と呼び掛けている。
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