厳しすぎる校則必要? 「天然パーマの証明届提出やマフラー禁止」
▽学校側 根拠に「秩序維持」
「息子が高校に入る時、天然パーマを証明するために幼少期の写真と『地毛登録届』を提出させられた。そこまで必要でしょうか」。広島市西区の主婦(49)から無料通信アプリLINE(ライン)で疑問が寄せられた。「理不尽」「やり過ぎ」と受け止められるルールは今、「ブラック校則」との呼び名も付く。校則は、どこまで厳しくあるべきなのだろう。
この高校は、県立広島商業高(広島市中区)。同校では2週間に1度、服装など身だしなみを検査し、違反すると専用紙に保護者の署名と押印を求めている。生徒指導担当の教諭(53)は「検査時にパーマや染髪をしているんじゃないか、との誤解を受けないよう事前に登録してもらっている。写真は事実確認に必要」と説明。あくまでも「検査によって、生徒が精神的苦痛を被らないようにするため」と強調する。
一方、声を寄せた女性は「親が子どものくせ毛を証明しないといけないなんて。わが子は学校に信用されていない感じがした」と戸惑う。「真っ黒の直毛が当たり前、という考え方もおかしくないですか」
▽各学校にルール
中国地方の公立中高でみると、他にも細かなルールを定めている学校がある。
広島県内のある町立中はマフラーとネックウオーマーを禁じている。「何重にも巻くと華美になる恐れがあるため」という。また複数の広島市立の中学はコート類の上着を禁止。寒さ対策としてのハイソックスや膝掛けを禁止する学校もある。
娘が県立高に通う保護者女性(47)は「子どもは震えながら登校している。生徒の健康管理こそ大切なのでは」と問う。防寒具の禁止は「身体的な苦痛を強いている」との見方もある。
「ポニーテール禁止」など髪形の規則も多い。岩国商業高(岩国市)は「後ろ髪が首の付け根についてはいけない。女子はつく場合は結ぶ」というルールがある。眉の手入れを禁じたり、髪に着けるピンやゴムの色を指定している学校も少なくない。
そもそも校則について定める法律はなく、各校の判断に委ねられる。学校はなぜ、厳しい校則を必要とするのだろう。
「生徒の将来を考えてのこと」と、地毛登録を求める安西高(安佐南区)生徒指導担当の志村祐教諭は説明する。「就職の面接などは見た目で判断されることが多い。好印象の姿を普段から身に付けてもらいたい。ルールを守ることで、社会の厳しさを学ぶこともできる」。広島市内のある高校の教頭(57)は「集団生活で自由すぎると秩序が保てない。学校の評判を落とさないためにも厳しさは要る」とする。
▽合理性の説明鍵
「校則は全国的に厳しくなっている」と、名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は指摘する。校内暴力が吹き荒れた1980年代よりも厳しいとの見解だ。大学で推薦入試の割合が増え、学校が生徒を管理する傾向を強めているとみる。「違反者が出るたびに指導を細かくマニュアル化し、厳格化する流れが続いている」
ブラック校則という言葉は、こうした管理偏重型の教育に一石を投じるものだろう。学校生活で一定の秩序を保つためのルールは必要だが、「大切なのはその合理性を説明できるかどうか」と内田准教授は強調する。
「企業が従業員の髪形や眉の手入れを規制する場合、合理性が厳しく問われ人権上の問題となることもある。理不尽なルールを押し付けるのではなく、子どもの尊厳を守り多様性を尊重する校則であるかどうか、点検する必要がある」
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