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「正月の県北郷土料理、どこまで浸透」 ワニ文化、広島市内にも

2019/1/4 0:00
ショージ白木店で刺し身として販売されるワニ

ショージ白木店で刺し身として販売されるワニ

 新年を迎え、皆さんはどんなごちそうを囲んでいるだろうか。「広島市安佐北区にワニ(サメ)が売られています」。同区の矢原敏明さん(67)から無料通信アプリLINE(ライン)で、こんな情報が寄せられた。ワニは保存が利くことから、県北では冷蔵庫のない時代から正月などに刺し身で味わう文化が根付く。広島市内にも広がっているのか。調べてみた。

 ▽北部中心 ゆかりの人愛好

 矢原さんに教えてもらった「現場」は、スーパーのショージ白木店(同区白木町)。訪ねてみると刺し身用のワニが並んでいた。

 ▽「根強い人気」

 鮮魚売り場を担うウオナカ(西区)の法地豊年社長(53)によると、2005年に開店してすぐの頃、客からの要望を受けて入荷を始めた。「根強い人気がある」という。

 ワニを買ったことがあるかどうか、同店で客30人に尋ねると5人が「ある」。その1人、白木町のパート小泉菊江さん(70)は「祝いの席には欠かせない」と話す。出身地の庄原市で食べていたため、好きなのだそうだ。

 1日かけて白木町を回り住民に聞き込みをすると、「正月と言えばワニ」という人に10人ほど出会えた。ワニの本場の三次市や庄原市の出身だったり、通勤経験があったり。県北にゆかりがあるという共通点があった。

 約30年前まで鮮魚店を営んでいた山口祥子さん(79)からは「県北出身の人が好むから売っていた」との証言を得た。山口さんが21歳で店に立つようになった頃には扱っていたというから、少なくとも約60年前にはワニが白木町でも食されていたことが分かる。

 広島県立歴史民俗資料館(三次市)の葉杖哲也主任学芸員(54)は「広島市北部は県北出身者が多く、ワニ食が広がる素地がある」と分析する。では県内の他のエリアはどうだろう。

 身近な地域でワニが売られていませんか―。「こちら編集局です」のLINEに友だち登録をしてくれている読者約2700人(昨年11月26日時点)に一斉に問い掛けた。約70人が回答を寄せてくれた。

 ▽安佐南区でも

 思いがけない情報があった。安佐南区にあるJA全農ひろしま直営の「とれたて元気市」でワニの刺し身を見たとのこと。

 取材すると1年半ほど前から週末のみ、不定期で販売していると分かった。安佐南区にワニを食べる習慣はないが、県北の味覚を知ってもらう狙いがあるという。

 「広島の中心部でワニ料理が食べられますよ」。そんな声も届いた。中区基町の「庄原食堂」が出しているワニ定食だ。早速、記者も食べに行った。初めて食べるワニの刺し身は臭みが全くなく、淡泊でおいしかった。

 昔は「安さが売り」だったというワニ。今回の取材で、刺し身は100グラム300〜400円で売られていた。決して安くはない。それに、あらゆる魚が生の状態で当たり前に流通する時代になった。それでもなお、ワニは県北住民だけでなく古里を離れた人を引き付ける。さらに新たなファンが生まれるかもしれない。(新本恭子、久保友美恵)

この記事の写真

  • 庄原食堂のワニ定食を注文した久保記者。ワニの刺し身やフライが一皿に盛り付けられている

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