反響 引きこもる子・親も高齢化
昨年末、「こちら編集局です」で中高年の引きこもり問題を取り上げたところ、無料通信アプリLINE(ライン)などで多くの反響が寄せられた。それはいろんな立場の人からだった。親、きょうだい、親戚、そして本人―。どう支えればいいか、どうすれば一歩を踏み出せるか。それぞれが、個々の立場で悩みを抱えていた。「不安の連鎖」を解く鍵はどこにあるのだろう。
息子の自立を願う広島市の男性(70)は「時間が止まってほしい」とつぶやく。「職場でのつらい経験が引き金になった。働いてほしいが、何か言って逆効果になるのが怖い」。タイミングを計り、数年がたった。
50歳近いおいを心配する同市の女性(71)も「親族中でその話題を避けている」という。「プライドを傷つけてしまうとかわいそうだし…」。一家への関わり方に悩む。
廿日市市の女性の気掛かりは、20年以上実家にこもる40代の弟。いまは両親と同居しているが、「親亡き後」を考えると強い不安が押し寄せる。「わが子の教育費を弟の生活費には回せない」。父が相談機関に頼るのを嫌がるため、一歩を踏み出せずにいる。
声から浮かび上がるのは、「孤立」という言葉だ。本人も家族も不安を抱えたまま、外部とのつながりを閉ざしている。実際、鳥取県が昨年実施した実態調査では40、50代の引きこもりの人は少なくとも365人いたが、支援を受けているのは4人に1人だった。
ただ、この調査の方法がとても興味深い。県は実態を把握するため、市町村への相談件数だけではなく、民生委員や自治会などからも情報をすくい上げ人数を割り出した。そうすることで、自ら声を上げていない当事者たちの存在が見えてくる。
こうした地域との連携こそ、隠れた支援ニーズの掘り起こしにつながりそうだ。例えば総社市の「ひきこもり支援センター ワンタッチ」は、市内の社会福祉法人とタッグを組む。法人のヘルパーやケアマネジャーが訪問先で家族の引きこもりに気付いたら、情報を入れてもらう仕組みになっている。
当事者たちの背中を押すきっかけも必要なのだろう。既に両親を亡くしている引きこもりの女性が編集局に寄せた手紙には、こんな胸の内がつづられていた。「仕事をしたいが、10年以上働いていないので面接が怖くて。引きこもり状態を抜け出せた人の話を聞き、私も一歩踏み出したい」(新本恭子)
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