「インフル治癒証明って必要ですか」 広島県内15市町、登校に不要
▽学校・医師が判断のケースも
「インフルエンザの治癒証明書って本当に必要でしょうか」。広島県内の主婦(40)が編集局に声を寄せた。「もう一度受診すると時間やお金がかかる上、混雑する病院で別の病気をもらう心配もある」と案じる。県内の23市町の教育委員会に尋ねると、15市町が「不要」とし、各学校や医師の判断に委ねている市町もあった。
医師が書く治癒証明書は、感染拡大を防ぐ観点で学校や企業で求めるケースがあるが、法的に必須ではない。
県内23市町で治癒証明書が「原則必要」とするのは、呉市や三原市など5市町。一部の医師や、わが子への感染を心配する保護者が証明書を必要と訴えていることなどが理由だ。
「不要」としたのは広島市や福山市など15市町で、県内の大半を占めた。三次、廿日市両市は一律の指針を定めず、世羅町は各医療機関の判断に委ねている。
「不要」の市町の多くは、2009年に文部科学省が出した「治癒証明書は意義がない」との事務連絡を根拠に挙げる。12年改正の学校保健安全法施行規則は、出席停止期間を「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」と規定しており、この基準をクリアすれば医師の証明は必ずしも要らないとの考え方だ。
▽「周りのために」
ただ、市教委レベルで「不要」としつつ、校長判断で証明書を求める学校もあった。広島市内のある公立中の校長は「発症して2、3日なのに『熱は下がった』と登校する生徒がいた。流行期は受験シーズンでもあり、周りの子のためにも基本的に証明書を求めている」と明かす。
医学的にはどうだろう。県感染症・疾病管理センター(広島市南区)の桑原正雄センター長は「法定の出席停止日数は、それ以降は他人に感染させる力がないという意味だ」と説明。「証明書をもらいに通院し、別の型に感染する恐れもある。停止期間が過ぎる前に登校させる場合を除き、治癒証明書は不要だ」と言い切る。
証明書がなくても学校と保護者の双方が安心できる仕組みは作れないものか。モデルケースとなり得るのが庄原市の取り組みだ。
▽保護者が報告書
以前は各校で対応が異なっていたが、市医師会と校長会、市教委が協議を重ね、09年度から治癒証明書が「不要」に。代わりの「治癒報告書」に、受診した医療機関名と日付、発症後の約1週間の体温を保護者が記入し、学校に提出するルールにした。
広島市教委も、治癒証明書に代わる新たな書式を作る方向で協議中という。
家庭で体温を測り、記録し、経過を学校に提出する―。保護者のこうした一手間が、感染拡大を恐れる学校側の不安を和らげる。証明書頼み、医師任せでなく、学校と家庭が連携することが大事なようだ。(馬場洋太、東海右佐衛門直柄)
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