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マンモス校、対応策は? 「祇園中の生徒急増。窮屈そうで心配」

2019/2/25 0:00
祇園中の体育館に集まった全校生徒。限られたスペースに肩を寄せ合って座る(1月7日、祇園中提供)

祇園中の体育館に集まった全校生徒。限られたスペースに肩を寄せ合って座る(1月7日、祇園中提供)

 「祇園中(広島市安佐南区)の生徒数が急増しています。子どもが進学し、窮屈な学校生活を送ることになりそうで心配」。小学生の子を持つ同区の40代主婦が、無料通信アプリLINE(ライン)で声を寄せた。市教委によると生徒数は市立中で唯一千人を超え、さらに増えるという。「マンモス校」で何が起きているのか。

 祇園中の2018年度の生徒数は1060人で、10年前の1・7倍。特別支援を含め32学級あり、文部科学省の基準では「過大規模校」に当たる。団地開発やマンション建設で子育て世帯が大幅に増えたため。通学区域内の祇園、山本、春日野の3小学校の児童は現在計約3千人で、祇園中の生徒数は今後も増えるとみられる。

 地元で尋ねると、生徒の母親(45)が校内の様子を話してくれた。「バドミントン部は80人以上いて、コートが限られるため一人一人の練習時間が短い」「入学式や卒業式は、その学年しか出席できない」―。小学生の親の間では「運動会がなくなる」「部活に入らなくてもよい」などのデマも飛び交う。

 学校側も対応に苦慮している。例えば体育館での全校集会。生徒を壇上や2階の通路にも並ばせないと入り切らない。校内の合唱コンクールも、会場を市中心部の音楽ホールに変えた。絹谷徹校長は「その時々の状況で工夫していくしかない」と悩ましげだ。

 市教委は14年度、約4億9千万円かけて祇園中に9教室を増築。19年度までにさらに4教室を増築する計画という。教育企画課の橋本英士課長は「生徒の増加は長期的でなく、いずれ減る」とし、学校の分離・新設は考えていないとする。

 振り返ればニュータウン開発に伴う校舎増築は、広島都市圏で1970年代以降繰り返されてきた。近年も運動場にプレハブ教室を建て急場をしのぐ光景に出合う。「マンモス校」問題は祇園中に限った話ではない。

 こうした事態を防ぐため、積極的に情報を発信する教育委員会もある。兵庫県西宮市教委は、これ以上子どもが増えたら教室不足が予測される「受入困難地区」をホームページで公表。該当地区で住宅を増やすと、良好な教育環境を保てないとのメッセージになる。

 神戸市教委も、事業者に開発前の協議を求めている。ファミリー向け戸数の見直しを求めることもあるという。東京都江東区は、事業者に任意で校舎増築などに充てる協力金を要請している。

 元広島大教授で都市問題に詳しい同志社大の鯵坂学名誉教授は「教育環境を守るには開発を市場任せにせず、建築規制を厳しくするなど行政がコントロールする必要がある」と指摘する。学校を新設する場合も「将来子どもが減っても活用できるよう、福祉施設に転換しやすい設計にするなどの戦略が必要」と話す。

 西宮市教委などが発信する学校別の教室不足の情報は、市民が住むエリアを選ぶ上での指標になる。いかに教育環境を守り、子どもへのしわ寄せを防ぐか―。地域の開発にもその視点が求められる。(新山京子、馬場洋太)

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