反響 虐待とDV、密接に関係 「助けて」言えない母子
18日掲載の「こちら編集局です」で、夫の暴力(DV)に支配されるあまり、子への虐待を防げなかったという女性の苦悩を伝えた。すると「私もそうだった」と同じように自分を責め、悔いる母親たちの声が無料通信アプリLINE(ライン)で次々と届いた。「DVと虐待にさらされながら、助けてと言えない母子は大勢いるはず」。自らの体験を基に母親たちは訴える。支援の充実につながればとの願いが伝わってくる。
DVと虐待の密接な関係について考えるきっかけとなったのは、千葉県野田市の小学4年生の女児が亡くなり、傷害容疑で両親が逮捕された事件だ。母親は盾になってでも子どもを守るべきではないか―。父親よりもむしろ、母親への批判が集中した。
18日の記事では、DV被害者が「正常な判断力」を奪われ、解離症状やうつ病を患うケースも多いという専門家の声を伝えた。「すごく共感した」。大竹市の女性(60)は自身の体験と重ね合わせる。
「早く娘を泣きやまさないと夫から殴られる。追い詰められた私の手は、幼い娘の首を絞めようとしていました」。19歳で結婚した当初から、夫は女性を暴力と暴言で支配した。長女が生後5カ月だったある夜、「夜泣きがうるさい」と夫が怒り始めた。恐怖で頭が真っ白になり、無意識のうちに両手を娘の首に回していた。間もなく、われに返ったという。
▽うつ症状に
他にも、かつてDV被害の渦中にあった女性たちからはこんな声が届いた。「子どもが夫を怒らせる事をしないよう、私が先回りしていつも子どもを叱っていた」「夫が息子に暴力を振るう時、私が間に入るとさらに怒るので何もできなかった。食欲を失い、無気力になった」…。
夫に罵倒され続け、うつ症状に陥った広島市の主婦(62)は「夫が単身赴任になり、物理的に離れて初めて穏やかに暮らせた。自分も息子にきつく当たらないようになり、息子も明るくなった」と振り返る。加害者である父親から、まずは母子共に離れることが大切と強調する。
だが、それは容易なことではない。怒鳴り声や物を壊すことで、妻子を威嚇する夫におびえていたという女性(40)はLINEにこうつづった。「子どもと逃げたかった。でもできなかった。夫が怒鳴るたび、誰か通報して!と思っていました」
▽「通報が鍵」
自らSOSを出せないDV被害者が多い中、どうすれば解決へと導けるのか。この問題に詳しい広島弁護士会の寺本佳代弁護士は「児童虐待の通報をいかに生かせるかが鍵」と指摘する。市民の関心が高まり通報件数は増え続けている。「暴力を受けている子どもの背景に、問題の根っこであるDVが潜んでいないか。そこまで踏み込んで調べないと児童虐待そのものもなくならない」
第三者による通報は、暴力に苦しむ親子を救済する一つの道となるだろう。一方で、難しいケースに対応できる専門性の高いスタッフの養成なども求められる。寺本弁護士は「一家庭をDVと虐待の両方の視点で長期的にフォローする仕組みをつくる必要がある」と強調している。(久保友美恵)
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