3両電車、混み過ぎる 山陽線、カープ人気や外国人観光客増加
▽乗客の伸び、見込み違い
「JR山陽線の3両編成の電車が混み過ぎる。車両を増やせないのか」。広島市佐伯区の会社員女性(44)が無料通信アプリLINE(ライン)で編集局に声を寄せた。3両で走るのは新型の「227系」。JR西日本広島支社によると、新型を3両にした背景には、ある「見込み違い」があったという。
広島―五日市間を通勤で利用するこの女性。夕方のラッシュ時に来る3両の列車は広島駅で満員となり、次の電車を待つこともしばしばという。体調の悪い日は、諦めて路面電車で帰ることも。「3両だとぎゅうぎゅう詰め。最後の人は背中から乗ってきて尻で押してくるし、ドアが開いた瞬間によろける人もいて危ない。以前の4両に戻してほしい」と訴える。
広島都市圏の山陽線は、1980年代以降、最小単位を4両としていた。一方、2015年導入の227系は最小単位を3両または2両とし、山陽線は3〜8両に細かく組み替える仕組みにした。
広島支社運輸課の辻敏哉担当課長は「13年夏に広島への新型車投入を決めた当時は乗客数が現状維持で推移するとみて、山陽線も時間帯によっては3両で大丈夫と考えた」と説明する。
だがその後、乗客が増える誤算が起きた。インバウンド(訪日外国人客)が伸び、広島東洋カープの好調を受け観戦客のJR利用が増加。15年3月開業の新白島駅も1日の乗車人数が15年度7900人、16年度9698人、17年度1万1044人と年々増え、混雑に拍車を掛けた。
宮島帰りの観光客と下校の高校生が乗り合わせる夕方の電車では、3両だと乗り切れない人も見掛ける。高校1年女子(16)は「カープの試合がある日はあまりの混雑で2本見送ったこともある。車内で『痛い』『押すな』などと怒声が聞こえることもあり、怖い」とこぼす。
こうした事態について、辻課長は「迷惑をかけている認識はある」と認める。その上で、山陽線三原―岩国間と呉、可部線を227系に統一する16日のダイヤ改正では「利用の少ない便を4両から3両にし、その分、混雑する便の両数を増やした」と理解を求める。
ただ、ダイヤ改正後も混雑する時間帯に3両編成が残る。「山口、岡山県内からの旧型車の乗り入れもなくなり、広島都市圏を限られた227系だけで賄うため、ダイヤ編成を工夫しきれなかった」と辻課長。3両編成をやめる計画は、現時点ではないそうだ。
交通政策に詳しい関西大の安部誠治教授は「在来線の車両は数十年使うため、地方では人口減少を見越して編成を短くする考えがあるのだろうが、混雑がひどいと評判を落とす」と指摘。「車両をすぐに増やせないなら、乗客が多い区間だけの折り返し便を増やすなど工夫すべきだ」と提案する。
編集局に届いた中には「JRに訴えても無反応だ」との意見もあった。ただ広島支社によると、駅員などに寄せられた声は支社や大阪の本社に伝えており、広島都市圏の混雑に関する苦情は幹部も認識しているという。現場の実態をつぶさに見てほしい。(馬場洋太)
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