平和公園、風物詩に対策は 「花見客の残したごみが目立つ」
「花見客の残したごみが目立つ」。桜が満開となった平和記念公園(広島市中区)を訪れた会社員男性(51)=府中町=から、こんな声が編集局に届いた。花をめでながら市民が弁当や飲み物を楽しむ光景は風物詩だが、一帯は原爆死没者を慰霊する空間でもある。対応策はないのだろうか。
原爆ドームを含む平和記念公園の中で、花見客が最も集中するのは公園の東側を流れる元安川沿いだ。南端の平和大橋から元安橋まで川べりを歩いてみると、空の弁当やビール缶などがごみ箱からあふれていた。
花見客に聞いた。高校の同級生と集まった西区の会社員近森優希さん(19)は「原爆ドームに近く外国人観光客も多い場所。ヒロシマのイメージが悪くなるので持ち帰った方がいい」と花見客のマナーアップの必要性を指摘する。一方、中区の会社員山下裕司さん(35)は「ごみ箱が小さく数も少ない。仮設のごみ置き場が欲しい」という。
平和記念公園を管理する市緑政課によると、敷地内にごみ箱は52カ所ある。このうち平和大橋から元安橋までの元安川沿いは5カ所だけ。西村進課長補佐は「公園周辺の景観への配慮もあり、ごみ箱の増設は難しい。仮置き場の設置は貴重な意見だが、どんどん捨てていい、と考える人も出てきかねない。現状では皆さんのマナーに期待したい」と理解を求める。
市も対応はしている。シーズン中は市シルバー人材センターに委託し、通常1日1回の清掃に加え早朝、夕方もセンターの会員がごみ箱を空にしている。記者が作業に同行すると、90リットルの袋がすぐいっぱいになった。リヤカーで集積場との間を何度も往復する。それでも半日もたたないうちにごみ箱はあふれる。かといって大容量の仮置き場を公園内の各所に設ければ抵抗感を持つ人もいそうだ。
平和記念公園はかつて繁華街だった。原爆で壊滅した後、慰霊と世界恒久平和を願う場として整備された。だから「桜の名所」になったのも戦後のこと。廿日市市の浜井徳三さん(84)は、公園内にあった旧中島本町で理髪店を営んでいた両親と姉、兄を原爆で失った。「わあわあ騒がれる光景はあまり気分が良くない」と声を落とす。
ビニールシートを敷いた区画に、誰のどんな日常が「あの日」まであったのか。そう思いをはせながら、笑顔で花見ができる平和をかみしめる。そしてうたげの後は各自でごみを持ち帰る。そんな流れができればいいなと感じた。(山本祐司)
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