色覚異常、観戦不自由も 「スコアボードのボールのカウントが見えにくくなった」
「マツダスタジアムの電光式スコアボードが改修され、ボール(B)のカウントが見えにくくなった」。色覚異常があるという広島市南区の自営業男性(65)から無料通信アプリLINE(ライン)で編集局に声が寄せられた。色覚異常は日本人男性の20人に1人(5%)いるとされ、不自由を強いられている人は多そうだ。
▽改修で「水色」から「緑」に
色は誰でも同じように見えているわけではない。先天的な色覚異常では、特に赤や緑の識別が難しいタイプが多い。3万人が入る球場なら、数百人が見づらいと感じている可能性がある。
声を寄せた男性が指摘するのは、市が2月までに改修したバックスクリーンの電光式スコアボード。昨季まではボール(B)ストライク(S)アウト(O)を独立したランプで表示していたが、今季は大型映像スクリーンに表示。Bの色は昨季までの水色から、緑に変わった。
男性は、緑とグレーが隣り合っていると識別が難しく(緑)(灰)(灰)、(緑)(緑)(灰)、(緑)(緑)(緑)の見分けに苦労する。「目を凝らせば何となく見当はつくが、自信はない。観戦した日は、妻にその都度『今、何ボール?』と聞いた」と明かす。
広島県眼科医会常任理事の宮田章医師(57)は「Bの消灯時の表示がグレーで、緑との明暗差が小さいため余計に識別しづらいのではないか」とみる。色覚異常でも青は識別できる人が大半といい、対策としてはBを青に変えるか、消灯時を黒にするのが有効という。
そもそも、BSOの色に基準はあるのか。日本野球機構(NPB)に聞くと「野球規則に色の規定はない」という。球場を所管する市によると、現在のBSOの色はスコアボード改修を機に市と広島東洋カープ、メーカーの3者で協議。大型映像スクリーンにBSOを表示しているナゴヤドームなど他球場の例を参考に、色を決めたという。
市都市整備局の沢裕二・広島駅周辺地区整備担当課長は「取材申し込みを受け、球場に出向いて昨季の色と見比べたら、確かに緑が強くなっていた。配慮が不足していた」と釈明する。色の調整に費用はかからないといい、「交通信号の青の色を目安に、できるだけ早く変更したい」と話す。
取材した宮田医師からは、通常の見え方と色覚異常の人の見え方を対比できるアプリを教わった。アプリを起動したスマートフォンで、緑や赤で色分けしたグラフや地図を見ると、意識していなかった見えづらさにはっとさせられた。
すべての人にとって見やすく分かりやすい情報にするためには、色の使い方の配慮が必要―。そんな「色彩のバリアフリー」の概念は、段差の解消やエレベーター設置などの移動のバリアフリーに比べ、社会的な認知が進んでいない。
広島市は、2005年に「色彩のユニバーサルデザイン」と題したガイドラインを定め、公共の案内表示や印刷物などでの配色の工夫を促している。その視点を早い時期に取り入れた姿勢は特筆できる。ただ、球場のケースのように、せっかくのガイドラインを使いこなせていないとすれば、もったいない。(馬場洋太)
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