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求人掲載「無料」の落とし穴 「サイトに20日間広告、無断延長され48万円請求」

2019/5/24 22:49
広島県内の事業者に広告会社が送ってきた確認書。「契約終了日の4日以上前に書面で申し出がない限り、更新」とある

広島県内の事業者に広告会社が送ってきた確認書。「契約終了日の4日以上前に書面で申し出がない限り、更新」とある

 ▽中小企業でトラブル相次ぐ

 「無料だからと電話で言われて求人サイトに申し込んだら、断りもなく延長されて高額の掲載料を請求された」。新潟県に本社を置くドラッグストアチェーンの採用担当者男性(55)から東京新聞「ニュースあなた発」取材班に情報が寄せられた。調べてみると、求人サイトの掲載を巡る同種のトラブルは全国の中小企業などに相次いでいた。

 「無料で20日間、サイトに求人情報を載せませんか。案内をメールで送りたい」。男性の会社に横浜市の広告会社から電話があったのは昨年9月。人手不足で悩んでいた折、願ってもない申し出だった。メールアドレスを伝えてすぐ、確認書と申込書が届いた。

 申し込んでから20日を過ぎて間もなく、掲載料48万6千円の請求書が届いた。男性が抗議すると、広告会社は「解約の申し出がないので更新した」と主張。確認書には「契約終了の4日以上前に申し出がない限り、期間を更新する」という趣旨の一文が目立たない場所に記載されていた。男性は約束と異なるとして支払いを拒否している。

 登記簿によると、広告会社は昨年6月に設立。同社が運営する求人サイトでは全国の地方ごとに、飲食・フード、営業、医療・介護・保育といった職種別の情報が見られるようになっている。

 確認すると、この広告会社とトラブルになっている事業者は他にもあった。広告会社は東京新聞の取材に「事前に電話で説明している。申し込んだのは相手の判断」と話した。

 近年、新たな求人サイトが次々に登場しているが、この広告会社以外が運営するサイトでも、同じようなトラブルが多数起こっている。ハローワークや大手サイトに出した情報が無断転載されたケースもあった。(東京新聞)

 ▽人手不足背景、勘違い誘う 中国地方でも相談

 同様のトラブルは中国地方でもあり、2018年度には5県で計100件を超えたことが分かった。

 広島県消費生活課によると、県や市町の相談窓口に寄せられた案件は18年度に31件。保育所や飲食店、福祉施設、クリニックなど小規模な事業者が目立つという。他の4県は山口約10件、岡山37件、島根11件、鳥取12件。ただ、企業間のトラブルは消費生活相談の対象でなく、各県とも商工団体や弁護士会の相談窓口を案内するにとどまる。

 背景にあるのは人手不足だ。中国地方の3月の有効求人倍率は1・94倍。広島県は2・13倍で、11カ月連続で2倍を超えた。

 「相手を信用した自分が未熟だった。勉強代と思うしかない」。広島市内の飲食店オーナー男性(44)は、スマートフォンで録音した業者とのやりとりを聞き返し、苦笑いを浮かべる。

 関東地方の広告会社から電話があったのは3月中旬。「他のサイトで求人を見た。3週間無料でうちにも載せないか」。好印象の営業マンに勧められ、表現を変えた3パターンの掲載を承諾し、ファクスで申し込んだ。求人への応募は1件もないまま、3週間後、店には50万円近い請求書が届いた。

 反論すると、会社側は「申込書に、解約申し出がない限り有料に切り替わると書いてある。念のため、解約の意思を確認する『アンケート』も事前に郵送した」と主張。訴訟もほのめかしてきた。

 「契約書類をアンケートだと装って送ってくること自体、悪意を感じる」とこの男性。幸い、依頼した弁護士が「有料契約の同意はない」と突き返すと、会社側からの連絡は途絶えた。だが、気は晴れない。「裁判になって東京に出向く手間や弁護士費用を考えると、面倒だからと払ってしまう人も少なくないはず」

 消費者関連のトラブルに詳しい畑雄太弁護士(中区)は「業者はハローワークの求人情報などを手掛かりに、『かも』となる人手不足の事業者を狙っているとみられる。無料を強調し、顧客の勘違いを誘っている点が悪質だ」と指摘。「無料期間終了後の手続きについて説明してこない勧誘には慎重に対応するべきだ」と注意を促している。

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