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孤立、負のスパイラル 引きこもり100万人時代。家族が抱える不安や悩みは

2019/6/20 23:28
30代の弟が引きこもりという女性から「こちら編集局です」にLINEで届いたメッセージ

30代の弟が引きこもりという女性から「こちら編集局です」にLINEで届いたメッセージ

 川崎市の児童殺傷事件や元農林水産事務次官による長男刺殺事件は、引きこもりの人の家族も孤立しがちな現実をあらためて突き付けた。そうした不安や悩みをまずは声に出してほしい、聞かせてほしい―。編集局は無料通信アプリLINE(ライン)の「お友だち」に呼び掛けた。すると、「身近に引きこもりの人がいる」という34人の切実な声が届いた。

 ▽支え手や居場所、地域に

 広島市佐伯区の主婦(57)は、10年近く自宅にこもる30代の長男が心配でならない。就職活動の失敗がきっかけだった。親子の会話で意見が食い違うと、長男はむっとして話さなくなる。「目に見えない大きな壁をつくるんです。家じゅうに緊張感が漂ってつらくなります」。誰かが解決に導いてくれるとは思えない。人に打ち明けることなく、1人で不安を抱えている。

 西区の主婦(36)も、具体的な一歩の踏み出し方が分からず苦悩する。弟(31)が実家で長く引きこもっているという。「どうしたら社会に出られるか。どこに相談したらいいか。家族がどこまで関わるべきか。何も分からず年月が過ぎています」

 34人中、相談機関などとつながりを持った人はわずか5人。行動を起こせない理由には、引きこもる本人への気兼ねもある。南区の50代女性は引きこもるいとこについて「他人の関わりをおせっかいと感じる性格なので何もできない」と訴える。

 世間体という重圧も家族を苦しめていた。妹が10年にわたり実家に引きこもっていたという福山市の30代の契約社員女性は、こんな言葉を寄せた。「家族は、家庭内に引きこもりの人がいることを近所や友人に知られないよう自らの交友関係も狭める。それが家族そのものを孤立に追いやる。負のスパイラルです」

 LINEでは、必要とする支援についても聞いた。30代の長男が自宅に引きこもっている県東部の男性(63)は「専門家による訪問面談」を挙げた。老いた親の元で暮らす妹を心配する看護師女性(44)=広島市安佐南区=は「親が亡くなった後、入所できる施設があれば」と望む。

 一方、編集局には「身近に引きこもりの人はいない」という人からも、支援について実にさまざまな意見が集まった。「引きこもりの人たちだけの働く場所を設ける」と提案するのは福山市の大学生女性(21)。逆に、地域の輪に迎え入れられないかと考えるのは同市の会社員女性(59)だ。「スキルを地域で生かしてもらえる出番をつくる」と思い描く。

 東区の大学生女性(21)は「引きこもりの人が決心して家を出た時に、周囲の人が冷たい目をしていないことが支えになる」。西区の看護師女性(47)は「世間の目を恐れ、引きこもりの家族の存在を隠す人もいる。周りが偏見を持たないことが重要」と投げ掛けた。

 また、自らの経験を踏まえた意見もあった。佐伯区の介護士女性(60)は「介護現場で気になる家庭がある場合、家庭全体への支援について相談し、連携できる部署が自治体にあるといい」と提案する。

 引きこもりの人や不登校の子どもを支援する佐伯区のスクールソーシャルワーカー女性(61)は「学校復帰や就労を目指すのではなく、外に出る『はじめの一歩』としての居場所が必要」と強調した。「安心できる居場所があることで、自ら生き方を考えることができる」

 内閣府が今年まとめた調査では、40〜64歳の引きこもりの人は61万3千人。15〜39歳を対象とした2015年の調査も合わせると100万人を超える。本人や家族の「声」をいかにすくい上げるかが、支援体制を築くための一歩だろう。その上で一緒に考えたい。地域に何ができるかを。(小林可奈、久保友美恵)

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