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危険ブロック塀「なぜ放置」 「進まぬ撤去 注意喚起のコーンだけ」

2019/7/3 22:30
撤去対象の国泰寺高(中区)のブロック塀。倒壊に備えて注意喚起のコーンが並べられている

撤去対象の国泰寺高(中区)のブロック塀。倒壊に備えて注意喚起のコーンが並べられている

 「危険なブロック塀がまだ放置されている。早く撤去してほしい」。広島市安佐南区の会社員男性(64)から無料通信アプリLINE(ライン)で届いた声には写真が添付されていた。国泰寺高(中区)のブロック塀沿いに「この塀に気をつけて通行してください」と張り紙したコーンが並んでいた。大阪府北部地震でブロック塀が倒れ、女児が死亡した事故から1年余り。危険と認識されながら、撤去はなぜ進まないのか。

 ▽代替のフェンス設計に時間

 「放置はしていない」と、同校を管轄する広島県教委は強調した。大阪府北部地震を受けて昨夏、県立の全学校施設のブロック塀を点検。105校のうち53校の塀の撤去が必要と判断した。国泰寺高もその1校だ。

 53校については本年度中にブロック塀を撤去し、代わりとなるフェンスの建設工事を完了させるという。14億円近い工費も昨年度の補正予算などで確保済みで、「計画に沿って進めている」という。

 これに対し男性は「広島でいつ地震が起きるか分からない。本年度中なんてのんきに構えていいのか」と投げ掛ける。

 実際、53校のうち工事が完了しているのは福山市の沼南、福山葦陽高、福山特別支援学校、府中市の上下高の計4校。工事中は9校。残りの40校(75%)は未着手だ。男性が指摘するように、ブロック塀の撤去だけでも急げないものか。

 「基本的に、ブロック塀の撤去とフェンスの設置はセットで行います」と県教委施設課の吉田宏課長は話す。どんな素材のフェンスを選ぶか、高さや長さをどう設定するか、土台部分を残すかどうか―。各校の状況に見合うフェンスの設計や工法を確定させた上で、塀の撤去作業を行うそうだ。「その方が作業面でもコスト面でも効率がいい」という。

 広島市教委にも聞いた。やはり本年度中に、96教育施設のブロック塀を撤去し、フェンスを新設する。着工済みは15校、既にフェンス設置まで完了したのは己斐東小(西区)、城山中(佐伯区)の2校のみ。着手が遅い理由も同じで、「フェンスの設計などに一定の時間がかかるから」とのことだった。

 「ブロック塀を先に壊す」ことはタブーなのか。他の政令市に聞いてみると、そうでもなかった。堺市教委も大阪府北部地震を受け、昨年6月、80の学校施設のブロック塀の撤去を決めた。約1カ月後の7月末には工事を始め、今春完了させている。撤去後は仮フェンスを設置し、本年度中に正式なフェンスの設置を進めるという。

 「新設するフェンスの図面設計まで終えてから工事を発注―という手順では時間がかかる。危険な塀をいち早く撤去することに重点を置いた」と施設課の担当者。横浜市教委も、61校のブロック塀の撤去工事を昨年8月中旬に始め、3カ月後の11月末に完了させた。「一日も早い安全対策が必要」との判断でまずは撤去に力を注いだという。

 危険なブロック塀にコーンを並べて注意喚起しても、そこに塀がある限り「放置」とみるのが市民の感覚だろう。安全と効率のどちらを優先させるか。自治体には後悔のない選択を求めたい。(久保友美恵)

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