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「給食廃棄もったいない」大雨警報で休校、5万7000食が無駄に

2019/7/18 22:11
早朝に業者が炊く学校給食用の米飯(広島市安佐南区の嚶鳴ベーカリー)

早朝に業者が炊く学校給食用の米飯(広島市安佐南区の嚶鳴ベーカリー)

 「大雨警報で小中学校が休校になると、提供されるはずだった学校給食が廃棄されると聞きました。食品ロスが問題になる中、やりきれない思いです」。広島市佐伯区の主婦(30)から、無料通信アプリLINE(ライン)で声が寄せられた。少しでも廃棄を減らす方法がないものか、探ってみた。

 ▽早め判断で回避の例も

 市内で直近に給食が廃棄されたのは、大雨警報が出た6月7日。市教委によると小学校101校、中学校40校が休校した。牛乳や野菜は後日に回せたが、米飯や肉など5万7千人分が無駄になった。この日は午前9時ごろに雨が上がり、余計にもったいなさが募った。

 せめて調理時間の短い米飯は救えなかったのか。市教委に問うと、現状では難しそうだ。委託業者と取り決めた炊飯のキャンセル期限は前日午後3時という。市内の小中学校205校分の炊飯は7業者が分担し、1業者当たりの担当校が多いため配達に時間がかかる。そのため、未明には洗米に取り掛からなければならない。

 一方、それぞれの小学校が大雨などで休校を決めるのは多くの場合、当日の午前7時ごろ、中学校は同10時ごろだ。学校給食を所管する市教委健康教育課の藤川宜陽課長はこう説明する。「食材の廃棄を防ごうと思えば、現状では休校が決まっていない前日の段階で給食中止を決める必要がある。ただ、天候が回復して登校となったとき、急に弁当持参と言われて困る保護者もいると考え、踏み切れていない」

 業者も、現状に納得はしていない。安佐南区内の18校を受け持つ嚶鳴(おうめい)ベーカリー(同区古市)の西村政晴社長は「捨てることになるかもしれない、と思いながら炊くのはしのびない。何十年と悩んできた」とこぼす。

 同社は6月7日当日、8834食(621キロ)の米飯を泣く泣く廃棄した。同社が米をとぐのは、通常は午前3時。「天気が怪しい時は、とぐのをぎりぎりまで待つこともできる。せめて6時に休校か登校かの連絡があれば、浸す時間が短くてご飯が硬めにはなるが対応できる。なんとかならないか」。記者の取材に立ち会った藤川課長に、西村社長は訴えた。

 周辺町に尋ねると、当日朝でも炊飯をキャンセルできる例があった。坂町教委は午前7時。給食センターの山本秀志所長は「小中学校4校を1業者で炊いているから朝でも中止できる。大雨でご飯を廃棄した事例は近年はない」という。

 大きな都市でも、対応している事例はあった。人口31万人の愛知県春日井市。休校は市教委が一括して判断するという。学校給食課の長江泰典課長は「米飯のキャンセル期限は当日午前4時。暴風警報が出る可能性があるときは私たちが市役所に詰め、未明でも休校を決めれば炊飯中止を業者にお願いする」と話す。同市は、後日に回しにくい葉物野菜を市役所で来庁者に安価で販売するなど、工夫を凝らす。

 小中学校全校に、自校でも調理しやすい「アルファ化米」や乾燥野菜を備蓄しているのは京都市。台風接近が予想される日の食材をキャンセルし、もし登校になれば備蓄食材で給食を作る。2004年の台風による休校で、食材費約1千万円が無駄になった教訓から06年度に始めたという。

 大量の食材を計画的に仕入れ、炊飯を業者に委ねている学校給食の仕組みを、急に変えにくい事情も理解できる。ただ、児童に食育で生産者への「感謝の心」を教え、食べ残しを減らす指導に力を入れる傍ら、簡単に食材を廃棄してしまっては示しがつかない。知恵を絞るときではないか。(馬場洋太)

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