コラム・連載・特集

平和の願い、世界共通 原爆資料館の「対話ノート」翻訳してみたら…

2019/8/2 0:21
世界各国の言語で書き込まれている原爆資料館の「対話ノート」

世界各国の言語で書き込まれている原爆資料館の「対話ノート」

 「原爆資料館を訪れて『対話ノート』を開いたら、英語以外のメッセージもいろいろあった。なんて書いてあるのか知りたい」。広島市南区の会社員男性(36)が編集局に声を寄せた。原爆資料館(中区)を見学した人が感想をつづる「対話ノート」。メッセージのうち、学芸員たちも読めない5言語を外国人市民たちの協力を得て解読した。

 ▽「広島に共感」「核削減を」

 7月下旬に取材で資料館を訪れ、計13冊を開いてみた。本館が展示を替えて再オープンした4月25日から7月3日までに書かれたもの。英語と日本語以外の言語がほぼどのページにも記されていた。

 まず翻訳を頼んだのはイスラエルの公用語であるヘブライ語。埼玉県の家具作家ダニー・ネフセタイさん(62)によると、イスラエルからの来館者はナチス・ドイツがユダヤ人たちを組織的に虐殺したホロコーストを重ね合わせた。「大悲劇を経験した民族の一人として、広島の悲劇も共感できる」「私の家族も含め、ユダヤ人も家族全員が殺された事実があるのでとても共感できた」と。

 ▽復興を評価

 ベトナム語は、NPO法人広島ベトナム協会(西区)のカオ・ホン・ゴックさん(35)に頼んだ。「私たちの国も日本と同じ戦争の痛みを経験しました」とベトナム戦争を思い起こした記述。さらに日本の戦後の復興を「回復力がある」と評した感想もあった。

 「広島で起きたことに正当性の余地はない。核兵器製造についてよく示したもの。その削減と不使用を訴えている」。サウジアラビアからの来館者はアラビア語で書いた。訳した広島市立大の田浪亜央江准教授(48)はイラクでの劣化ウラン弾の被害などを挙げ「アラビア語圏でも核汚染が進んでいる地域がある。イスラエルは事実上の核兵器保有国であり、核兵器への認識は敏感だ」と見立てた。

 そして平和を求める声は世界共通だった。群馬県伊勢崎市の会社員江藤ステファニーさん(23)が訳したポルトガル語は「戦争はもういらない」。東京都葛飾区の大学生田村大樹さん(23)が訳したスペイン語は「神様が私たち人類に世界の平和を維持するための知性と愛をくださりますように」とつづった。資料館で核兵器の非人道性を感じれば、当然に行き着く答えなんだとあらためて思う。

 ▽活用に意欲

 対話ノートは現在、東館1階と本館ギャラリーに2冊ずつある。開館15年後の1970年に始め、1日時点で1548冊に上る。学芸課の職員が読んだ後、永久に保存する。ただ、訳せるのは英語、韓国・朝鮮語、フランス語、ロシア語だけ。同課の加藤秀一課長は「職員も感想が気になり、知人にスペイン語やヘブライ語の翻訳を無償で依頼したことがある。毎回は時間もお金もかかるので難しいが、来館者の受け止めを知る方法として今後も対話ノートを活用したい」と話す。

 取材では、ベンガル語で書かれた長文のメッセージや、何語か判別できないメッセージも多くあった。外国人観光客は増えている。少しでも活用される環境を整えられないだろうか。(山下美波)

この記事の写真

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 「こちら編集局です あなたの声から」では、みなさんが日ごろ「なぜ?」「おかしい」と感じている疑問やお困りごとなどを募っています。その「声」を糸口に、記者が取材し、記事を通じて実態や話題に迫ります。以下のいずれかの方法で、ご要望や情報をお寄せください。

  • LINE公式アカウント

    LINE友だち登録またはQRコードから友だちになってトークをしてください
  • 郵送

    〒730-8677
    広島市中区土橋町7-1
    中国新聞社
    「こちら編集局です」係

    ファクス

    中国新聞編集局
    「こちら編集局です」係
    082-236-2321
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

こちら編集局です あなたの声からの最新記事
一覧

パートナー社

  • 中国新聞「こちら編集局です あなたの声から」は、双方向型の調査報道に取り組む全国のパートナー社と連携協定を結んでいます。記事をお互いの紙面やウェブサイトに掲載したり、情報の取り扱いを十分に注意した上で取材・調査テーマを共有したりします。地域に根を張るローカルメディアがつながり、より深く真相に迫っていきます。

北海道新聞 東奥日報 岩手日報 河北新報 新潟日報 東京新聞 信濃毎日新聞 中日新聞東海本社 岐阜新聞 京都新聞 神戸新聞 まいどなニュース 徳島新聞 西日本新聞 琉球新報