「原爆の日」特集

被爆者の思い、条約批准を 平和宣言、核廃絶へ政府に訴え

2019ヒロシマ2019/8/6 8:59
あの日から74年の朝。原爆慰霊碑の前で祈りが続いた=6日午前6時10分、広島市中区の平和記念公園(撮影・山崎亮)

あの日から74年の朝。原爆慰霊碑の前で祈りが続いた=6日午前6時10分、広島市中区の平和記念公園(撮影・山崎亮)

 米国による原爆投下から74年を迎えた6日、広島市は平和記念公園(中区)で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。松井一実市長は平和宣言で、国際的な緊張関係が高まり核兵器廃絶への動きが停滞していると指摘。被爆者の短歌を初めて引用してあの日の惨状を伝え、世界の政治指導者に被爆地訪問を促した。核兵器禁止条約に背を向ける日本政府に対し、「被爆者の思い」として署名・批准を求めた。

 冷戦後の核軍縮の柱となった米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約は、双方が対立したまま2日に失効した。松井市長は、二大核兵器保有国による軍拡競争が激化しながらも理性と対話で核軍縮にかじを切った1980年代の条約調印当時を思い起こすよう促し、「人類の存続に向け、理想の世界を目指す必要がある」と投げ掛けた。

 インドの独立に貢献したガンジーが言及した「寛容」の心の大切さも説いた。政治指導者に対し、ことし4月に本館がリニューアルした原爆資料館(中区)などで犠牲者や遺族一人一人の人生に向き合うよう呼び掛け、核軍縮や、市民社会が願う核兵器禁止条約の発効を訴えた。

 日本政府には「条約への署名・批准を求める被爆者の思い」をしっかり受け止め、核兵器のない世界の実現に向けたリーダーシップを発揮するよう要請した。

 午前8時に始まった式典には、被爆者や市民、政府関係者、各国大使たちが参列。松井市長と遺族代表2人が、この一年に死亡が確認された5068人の名前を記した原爆死没者名簿を原爆慰霊碑に納めた。名簿は117冊計31万9186人になった。

 原爆投下時刻の午前8時15分、遺族代表の面出明子(めんで・あきこ)さん(49)=西区、こども代表の可部南小6年正門和虎(まさかど・あいと)君(12)=安佐北区=が「平和の鐘」を突き、全員で黙とう。平和宣言に続き、こども代表の落合小6年金田秋佳(かねだ・しゅうか)さん(11)=同=と矢野小6年石橋忠大(いしばし・ただひろ)君(11)=安芸区=が「被爆者の魂の叫びを受け止め、伝え続けたい」と、「平和への誓い」を読み上げた。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は3月末時点で14万5844人となり、初めて15万人を下回った。平均年齢は82・65歳。(野田華奈子)

 平和宣言の骨子

■世界では自国第一主義が台頭し、国家間の排他的、対立的な動きが緊張関係を高め、核兵器廃絶への動きも停滞している。私たちの先輩が決して戦争を起こさない理想の世界を目指し、国際的な協調体制の構築を誓ったことを思い出し、人類の存続に向け、理想の世界を目指す必要があるのではないか

■平和で持続可能な世界を実現するためには、私たち一人一人が立場や主張の違いを互いに乗り越え、理想を目指し共に努力するという「寛容」の心を持たなければならない。未来を担う若い人たちが、被爆者や平和な世界を目指す人たちの声や努力を自らのものとして前進することが重要

■世界中の政治指導者には、核不拡散条約第6条に定められている核軍縮の誠実交渉義務を果たすとともに、核兵器のない世界への一里塚となる核兵器禁止条約の発効を求める市民社会の思いに応えてほしい

■日本政府には、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止め、核兵器のない世界の実現にさらに一歩踏み込んでリーダーシップを発揮してほしい

 平和宣言の全文はこちら

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 平和への誓いの全文はこちら

 平和への誓いの英語版の全文はこちら

 安倍首相のあいさつの全文はこちら

 湯崎知事のあいさつの全文はこちら


この記事の写真

  • 平和宣言を読み上げる松井市長(6日午前8時17分、撮影・高橋洋史)
  • 「平和への誓い」を読み上げるこども代表の石橋君(左)と金田さん(6日午前8時29分、撮影・高橋洋史)
  • 平和記念式典であいさつ文を読み上げる安倍首相(6日午前8時32分、撮影・高橋洋史)
  • 平和記念式典であいさつ文を読み上げる湯崎知事(6日午前8時40分、撮影・高橋洋史)

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