バスレーンに一般車 「通勤時に混雑常態化、機能していない」
「朝のバス専用レーンがマイカーで混み合い、全く機能していない」。広島市安佐南区から市中心部へバス通勤を続ける60代の会社員男性からこんなメールが編集局に届いた。到着が30分遅れるのは、日常茶飯事という。現場を取材してみた。
▽専門家「時差利用や手段変更を」
バスが走るのは国道183号の上り車線。安佐南区緑井1丁目から西区三篠町2丁目にかけての6・4キロは平日と土曜の午前7〜9時、片側2車線のうち左車線がバス専用レーンになる。バスやタクシー、バイクしか通行できず、一般車が走ると道交法違反(通行帯違反)となるが、男性によると、規制区間のほぼ中間点にある安佐南署を過ぎた辺りから混雑してくるという。
平日の9月20、24日、午前7時半から同署付近で道路の状況を取材した。バスレーンはすいていた一方、右車線はマイカーなどの列ができていた。
しかし、署を過ぎた辺りから様相は変わる。750メートルほど先にある「今津(南)交差点」では、183号に入ってきた車が混雑する右車線に入れず、左車線のバス専用レーンに次々と流入。そのまま走り続ける車が目立つ。2車線とも渋滞し、バスも巻き込まれていた。バス専用レーンを伝える道路標識もあるが、お構いなしの状態だ。
署周辺のバス専用レーンだけがスムーズなのは、同署が定期的に取り締まりをしているためとみられる。車通勤で通る50代の男性は「署を過ぎてしまえば摘発されることもないので、急いでいるときはつい左車線を走ってしまう」と打ち明ける。こうした声は他のドライバーからも聞かれる。
県警も違反車が常態化する現状を把握。これまで取り締まりは「違反車を引き込む場所が他にない」との理由から安佐南署の敷地を使っていたが、同署は「今後は他の場所でも取り締まりたい」と場所を選定中だ。ただ、取り締まりは違反車の抑制に一定の効果が期待できるものの、抜本的な解決までは見通せない。
バス専用レーンの規制区間は183号沿いに店舗が並び、周辺には住宅がひしめき、車の出入りが激しい。国土交通省が2015年に算出した1日の平均通行量(推定)は4万1828台。ラッシュ時には市中心部方面の2車線は、左車線がバス専用レーンになる上、右折レーンがないため交差点に右折車がいると混雑に拍車がかかる。ドライバーからは道路改良を求める声が聞こえてくる。
ただ、道路を管理する区によると、改良の予定はなく、地域整備課は「右折レーンの設置には道路の拡張が必要。沿線には土地の余裕がないため、設置は難しい」と話す。
どう改善を図るべきなのか。広島工業大の伊藤雅(ただし)教授(交通計画)は「限られた道路を利用する際はバスが効率的で、定時性を守らなければならない」とした上で、ドライバーに対し(1)渋滞して時間のかかる車ではなく、バス利用に転換する(2)車は使うが、バス専用レーンのない時間に時差利用する(3)車を使うなら渋滞を覚悟し、バス専用レーンには入らない―の選択肢を提示。バス会社には「連節バスを導入するなど車両を大型化し、より多くの乗客を運べるようにする工夫が必要」と改善策を求める。(高橋寧々)
<クリック>バス専用レーン(バス専用通行帯) 公共交通機関の定時性確保が目的で、交通量が多く複数の車線がある道路を対象に都道府県公安委員会が指定する。県内では広島市21カ所、福山市4カ所、呉市2カ所が指定され、規制の時間帯は場所によって異なる。バスやタクシーだけが通行でき、違反すると、違反点数1点と反則金が科される。反則金はトラックなどの大型車7千円、普通車6千円など。
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