かんぽ調査「納得いかぬ」 高まる不信、第三者必要
▽「形だけ。多くの不当な契約が見過ごされる可能性」
「形だけのザルのような調査だ」。こんな厳しい声が編集局に続々と届いている。日本郵政グループが進めている、かんぽ生命保険の不正販売調査のことだ。「全力で取り組む」とするが、重点的に調べる契約は「不利益を与えた恐れがある」と自らが認めたほんの一握り。全体の1%にも満たない。「多くの不当な契約が見過ごされる可能性がある」という。
調査は大きく二つに分類される。一つは「特定事案調査」(18万3千件)。「無保険となった」などの不利益を与えた疑いがある契約者が対象となる。該当者は文書で通知を受け、後日、電話や訪問による調査が進められる。
もう一つは、それ以外の契約者向けの「全ご契約調査」(3千万件)。「契約は意向通りか」などを問う書面が届き、返信用はがきで回答するというものだ。憤りの声は、こちらの「それ以外」に振り分けられた人たちから届いている。「こんな簡単な調査で実態が解明できるのか」と。
東広島市の男性(63)もその一人。父親が亡くなった直後、相続対策をうたうしつこい勧誘に遭った。職場まで押し掛けられしぶしぶ契約した経緯がある。「顧客の感情に寄り添わず、独自のものさしで契約を仕分けしている。こっちはふに落ちていないのに、簡単に片付けられては困る」
広島県の30代元局員も、全ご契約調査の「ぬるさ」を指摘する。問題視するのは、過去に解約をしたことがある顧客にその理由を尋ねる質問。選択肢に並ぶのは「まとまったお金が必要となったため」「覚えていない」などで、不正販売の根っこにある局員の行き過ぎた勧誘に言及するフレーズがないのだ。元局員は「問題解決につながらないひどい調査」と言い切る。
実際、解約すらできなかった顧客もいる。広島市東区の介護士女性(70)は月8万円近くの保険のクーリングオフに応じてもらえなかった。返信用はがきには自由記述欄が設けられているが、女性はこう語気を強める。「こんな小さい枠では事実を伝え切れない」
さらに「不親切さ」に言及する声も。調査は書面で「契約は意向通りか」と尋ねるだけで、契約内容の案内は同封されていない。80代の母が強引に保険を乗り換えさせられたという名古屋市の50代主婦は「高齢者の中には契約内容が分からず、回答できない人もいるだろう」と心配する。
広島県の50代男性が受け取った返信用はがきには、意向通りで意見などがない場合「返送は不要」と書かれていた。「返送しなければ意向通りと見なすのか。質問の趣旨が分からないために送り返せない高齢者や認知症の人はきっといる。1件ずつ丁寧に追跡するんだという意志が全く伝わってこない」
顧客の信頼を回復するための調査が、逆に溝を深める引き金になってはいないだろうか。中国地方のある現役局員は「郵便局への不信が広がり解約が相次いでいる。こんなに穴だらけの調査を見て、誰が郵便局は頑張っていると思うだろう」と社内調査の限界を指摘。「第三者による調査に切り替えるべきだ」と力を込めた。(小林可奈)
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