カープの規制、来季から 「不正転売禁止法施行後もチケットなぜ高値?」
リーグ4位に終わった広島東洋カープ。ファンも来季に向けて気持ちを立て直したいところだが、一つすっきりしないことがある。6月に入場券不正転売禁止法が施行されたが、シーズン中、複数の読者からこんな声が届いていた。「金券ショップなどで、カープチケットはずっと高値で売られている。おかしいのでは」。理由を探ると意外な事実が見えてきた。
▽注意事項の記載に不備
9月中旬、中区の金券ショップ。地元最終戦と予定されていた23日の内野指定席のチケットが、1枚1万800円で売られていた。定価3600円の3倍に当たる。また、転売サイトでもカープ公式戦のチケットが堂々と高値で売られていた。法規制の網に掛からないのはなぜだろう。
文化庁に尋ねるとこんな答えが返ってきた。「カープのチケットは今のところ法律の規制の対象外なんです」。どういうことか。
そもそも同法における「不正転売」とは(1)興行主の同意なしに(2)反復・継続して(3)定価を超える金額で譲渡する―ことだ。興行主すなわちカープ球団はチケットに「同意のない有償の譲渡は禁止」であること、「販売時に購入者の名前と連絡先を確認した」ことなどを明記する必要がある。記載がなければ規制の対象外とみなされる。
今季のカープチケットはその記載の一部が漏れていた。「販売時に購入者の名前と連絡先を確認した」ことを明記していなかった。せっかく今季は公式戦チケットの売り出しに抽選を取り入れ、当選した購入者には名前と連絡先の記入を求めたのに―。
カープ入場券部の島井誠統括部長は「年間指定席を含め、指定席の購入者はほぼ把握できている」と語る。来季の公式戦チケットには、購入者の名前や連絡先を確認したことを明記する方針という。
これでチケットの体裁は整う。ただ、ややこしいのが(2)の反復・継続性。規制されるのは利益を得るために繰り返し販売する行為である。すなわち「業」とした転売だ。逆に言えば、たまたま急用ができて観戦に行けなくなった場合。金券ショップを通じて定価を上回る価格で販売してもすぐに違法とはいえない。
この「業」か、「たまたま」かを見極めるのは難しい。「個人が転売する分については罰せられないのではないか」と、甘く見積もる人もいるだろう。
広島弁護士会消費者問題対策委員長の中村健太弁護士は「たとえ個人でも買った直後に売りに出したり、買い占めて売っていたり、一般常識を超えるような高値で売っていたりすると『業』とみなされ、同法違反に問われることもあり得る」と指摘する。
金券ショップも神経をとがらせる。中区のヒスイは、6月の法施行を機に定価での販売を徹底。また別の中区の業者も、「法律違反をしてまで商売するつもりはない」。今季は定価を超える価格で販売したが、カープのチケットが法規制の対象になれば「業」か「たまたま」かにかかわらず、定価に発券手数料などを加えた実費の範囲内で販売する方針という。
同法では入場口での本人確認などの努力を興行主に求めるが、球団は「現段階ではシステム上困難」とする。島井統括部長は「今後も転売防止策を検討し、幅広いファンが購入できるよう努める」と話す。
私たちもこの法律への感度を高めたい。違法リスクのあるチケットを警戒する機運をつくろう。カープは市民球団だ。チケットが高額すぎて見ることができないという人を、みんなで減らしたい。(石井雄一)
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