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【第6部 広島の未来へ】<2>行政・財界 事業の成果どう継承

2019/12/10
記念事業の推進会議が主催した時代行列ではメンバーのトップらが山車に乗り合わせる一幕も。左から上田家元、松井市長、深山会頭(当時)、湯崎知事(9月15日、広島市中区)

記念事業の推進会議が主催した時代行列ではメンバーのトップらが山車に乗り合わせる一幕も。左から上田家元、松井市長、深山会頭(当時)、湯崎知事(9月15日、広島市中区)

 旧広島藩主浅野氏の広島城入りから400年の今年、地元の官民諸団体が連携し、浅野氏を顕彰する記念事業を推し進めた。市民になじみの薄かった郷土史に光を当てる背景には、地元への愛着を育むとともに、文化の振興を街のにぎわいにつなげる狙いもあった。

 ▽歴史を再発見

 「被爆以前の広島の歴史や文化を再発見する契機にしたい」。昨年3月、入城400年を記念する事業の推進会議の初会合で、会長に就いた広島商工会議所の深山英樹会頭(当時)は意気込んだ。広島県や広島市、商議所、上田流和風堂など官民10団体が県庁に集まった。

 和風堂理事長で、茶道上田宗箇(そうこ)流の上田宗冏(そうけい)家元は「3年ほど前は盛り上がるとは思えなかったが、徐々に経済界の機運が高まっていった」と振り返る。自身は饒津(にぎつ)神社(東区)が2017年から独自に計画した記念事業の委員長も務める。同神社では今秋、浅野氏ゆかりの能衣装の収蔵庫を建設した。地元財界から寄付を募るうち、節目の年への認知が広がっていったという。

 同会議は本年度、展示会やワークショップといった民間や公共施設などが企画する112件のイベントを記念事業に認定。9月には武士や町人の衣装をまとう市民らが旧西国街道や広島城一帯を練り歩く「時代行列」と、記念式典を主催した。行列と式典には約5万人を動員。10月末までに実施された60事業には計約54万人が参加したという。

 商議所産業・地域振興部の伊木剛二部長は「内外に広島の文化をアピールし、集客につながった」と話す。その上で「郷土愛を育むことは長期的にも地域の活性化を促す」と説く。

 自治体トップも記念事業に前向きだった。中国新聞の取材に、広島市の松井一実市長は「世界に誇れるまち広島を実現するには、広島の人々自身がまちの歴史文化を知り、郷土愛を持たなければ」と回答。湯崎英彦知事も「江戸時代は今の広島の礎が築かれた時代だが、そうした事実が浸透していないのは誠に残念だと感じていた」という。

 ▽広がりに課題

 イベント中心の記念事業には市中心部のにぎわい創出も期待された。県や市、商議所は広島城(中区)と隣接する中央公園自由・芝生広場にサッカースタジアムを建設する方針を固めている。文化資源を活用した集客力アップは、24年のスタジアム開業を見据えた街の魅力向上を目指す3者の長期目標に沿う。

 広島市の後藤和隆・文化のまちづくり担当課長は「文化を生かしたまちづくりの基礎を築く一年になった」と胸を張る。

 一方で課題もあった。推進会議が記念事業を最終決定したのは今年の3月。同会議が設けた公式ホームページ(HP)の公開は年も半ばの6月だった。事業の本格化が出遅れた印象は否めない。県内各地への広がりに欠けたようにもみえる。県内23市町のうち関連イベントが実施されたのは11市町にとどまる。うち広島市に98件と9割近くが集中した。

 成果を来年以降にどうつなげるかも課題だろう。県文化芸術課によると、藩の歴史や研究者のコラムなども載る公式HPをアーカイブとして保存することを検討中だという。岡村恒課長は「一年の取り組みをレガシーとし、せっかくの盛り上がりを尻すぼみにさせないように努力したい」と力を込める。

 次世代にいかに継承するか、推進会議メンバーには積極的な関与が求められている。(城戸良彰)

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