【こちら編集局です】通学路の信号撤去「待って」 警察から打診「子どもたちが危険なのになぜ」【動画】
▽交通量の基準満たさず
「通学路の交差点4カ所の信号機を撤去する検討が進められている。子どもたちが危険にさらされるのになぜ撤去するのでしょうか」。広島市中区白島地区の白島小に通う児童の母親から、こんな声が編集局に届いた。調べてみると、警察庁の基準を満たしていないとして、広島県警が本年度中の撤去方針を地元に打診。反対する住民が署名運動を進めていた。現場を取材した。
白島地区は市中心部に近く、マンションが増える人気の地域。スーパーやコンビニ、飲食店などの店舗も多く、JR山陽線と新交通システム・アストラムラインの新白島駅が立地する。住民以外の「通過車両」も流入してくる。
信号機撤去の検討対象となった4交差点は住宅が多い地域を通る市道にある。白島小の通学路で、朝夕には多くの児童生徒が通る。信号機は1979年から96年にかけて設置された。
広島中央署が撤去方針を住民に伝えたのは、5月に開いた説明会。本年度中に撤去し、一時停止や注意喚起の路面表示を設けて安全を確保するとして、理解を求めた。背景には、2015年に警察庁が各都道府県警に示した指針がある。
▽反対の署名提出
指針は、交通量が最大になる1時間の交通量が300台以上▽隣接する信号機との距離が原則150メートル以上―など、交差点に信号機を設置する際の五つの必要条件などを提示。条件を満たさないのに信号機がある交差点では撤去を検討するよう求めている。白島地区の4交差点は同署の調査で、通勤通学の時間帯の車両通行台数は1時間当たり113〜272台。警察庁が指針で示した300台を下回ったという。
同署の説明に対し、住民側は「通学路であり信号機を撤去すれば子どもたちに危険が及ぶ」などと反発。11月中旬までに約4200人の署名を集めて同署に提出した。道幅が広く見通しが良い「東白島町5番」交差点を除く3交差点の信号機を残すよう求めた。
同署は11月下旬に再び住民向けの説明会を開催。「東白島5番」交差点の信号機を撤去し、反対署名が出た3交差点では本年度中の撤去を見送り、検討を続ける考えを伝えた。
「近くには駅もあり、歩行者が多い。車の通行量が少ないというだけで信号機をなくすのは困る」と、西白島町北区町内会の佐々木英治会長(69)は訴えるが、県警交通規制課は「信号機がなくても安全は確保できる」と強調。両者の主張はかみ合わない。
▽「大量更新期に」
県警の後ろ盾となっている警察庁の指針は、信号機設置について数値で示した初めての基準という。同庁は「国、地方とも財政状況が厳しい中、信号機などの交通安全施設は大量更新期を迎えている。老朽化による故障の懸念もある中、より効果の高いものに予算を効果的かつ効率的に措置する必要がある」と話す。
この指針を受け、広島以外の中国地方4県警も交差点の調査を進めている。ただ、岡山県警は交通弱者を守る観点から通学路を対象から外すなど自治体間で対応にばらつきがみられる。
水曜日の11日午前7時半、反対署名が出ている白島地区の大光寺前交差点に立ってみた。人通りはまばらで、信号待ちをする車も数台程度だった。ただ、同8時を過ぎると、車や自転車の通行量が増え、横断歩道を渡る児童や中高生の姿も目立った。
広島工業大工学部の伊藤雅教授(交通計画)は「信号機の維持にはコストがかかるため、必要かどうかを判断するのはやむを得ないが、信号機がなくなることに住民が不安を感じるのは当然」と指摘。「警察は住民や学校関係者の意見、要望にじっくり耳を傾け、地域でどうすれば安全が保てるかを考えることが大切だ」と話している。(今井裕希)
<クリック>信号機撤去を巡る中国地方5県の動き 警察庁の指針に基づき、各県警が信号機のある交差点を調査。広島県内では今月9日までに34交差点で信号機を新設し、39カ所で撤去した。広島市中区白島地区以外でも、撤去に反対署名が出ている地域があるという。他の4県では、2016〜18年に計102カ所の交差点で信号機を新設した一方、53カ所で撤去した。
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