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技能実習、日立に改善命令 入管庁など、計画外の作業従事

2019/9/7 17:32
法務省で日立の処分理由を説明する入管庁の根岸課長(左)たち

法務省で日立の処分理由を説明する入管庁の根岸課長(左)たち

 出入国在留管理庁と厚生労働省は6日、日立製作所(東京)が笠戸事業所(下松市)でフィリピン人技能実習生に対し、技能を学べない単純作業をさせ、技能実習適正化法に違反したとして、日立に改善命令を出した。

 入管庁によると、日立は実習生約40人に対し、配電盤や制御盤の組み立てを学ばせる計画になっていたのに、実際は鉄道車両の窓枠取り付けなどの単純作業をさせていた。違反があった時期は公表しなかった。

 入管庁発足前の法務省などが昨年7月以降、笠戸事業所を調査していた。関係者によると、日立は当初違反はないと主張していたが、改善する姿勢を示したという。このため入管庁は技能実習計画の認定取り消しより軽い処分の改善命令にしたとみられる。

 法務省などの調査後、笠戸事業所では技能実習計画が認められなくなり、日立はフィリピン人実習生99人を解雇。このうち溶接職種の26人はその後に計画が認められたが、残りの73人は解雇されたまま帰国した。

 入管庁などは約1カ月後までに、改善報告書を提出するよう日立に求めた。日立が実習態勢を適切に改めれば、実習生の受け入れを再開できるという。

 日立広報・IR部は「実習生をはじめ関係者にご迷惑をお掛けし、おわび申し上げる。既に改善しているが、処分を真摯(しんし)に受け止める」とのコメントを出した。

 入管庁などは、日立に実習生をあっせんしていた監理団体の協同組合フレンドニッポン(広島市東区)の調査も続けている。この日は、日立のほかに、企業と個人事業主の計3件の認定を取り消し、1件に改善命令を出した。

 ▽同様事案より軽い処分 入管庁、詳細説明せず

 出入国在留管理庁が法務省内で開いた記者説明会で、根岸功在留管理課長は日立製作所を改善命令にした理由を「改善の余地があるかなどを総合的に考えた」と述べた。認定取り消しより軽い処分だが、会長が経団連トップである同社への忖度(そんたく)は「全くない」と強調した。

 「詳細は控える」。認定取り消しにしない理由を問うと、根岸課長はまずこう答えた。さらに「改善の余地があれば、改善命令になる」と説明した。過去に同様の違反事案で三菱自動車などは認定を取り消された。なぜ日立は改善命令なのか。その違いは明確に説明しなかった。

 日立の会長は経団連の会長を務める。「通常だと認定取り消しにすることを、特別に改善命令にすることは決してない」と忖度を否定した。

 フレンドニッポン(FN)については「調査中。処分すれば公表する」とする。ただフィリピン政府は今回の問題を受け、FNと提携する現地機関を送り出し停止にしている。「フィリピン政府とは当然情報交換はしている」とした。

 大企業でも違反が相次ぎ、実習生が労働力と見なされている実態が浮き彫りになった。根岸課長は「制度には開発途上地域への技術移転というしっかりした目標がある」と強調した。

 笠戸事業所からは多くのフィリピン人が帰国した。「日本に悪い印象を持って帰られることは大変残念。改善の努力をさらに続けていかないといけない」と力を込めた。(河野揚)

 <クリック>日立製作所笠戸事業所 所在地は下松市東豊井。新幹線などの鉄道車両を造っている。技能実習生は昨年9月時点で約270人いたが、現在は86人。日立全体の実習生は89人いる。日立の別の事業所とグループ10社も、技能実習適正化法違反があったとして改善勧告や改善指導を受けたことが3月に明らかになった。

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