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【こちら編集局です】叡啓大の名称が難しい 「広島県立と分からない」「読みにくい書きにくい」

2019/12/20 23:07
叡啓大がキャンパスを置く広島国際大広島キャンパス=中央(広島市中区)

叡啓大がキャンパスを置く広島国際大広島キャンパス=中央(広島市中区)

 広島県が2021年4月の開学を目指す新たな大学、叡啓(えいけい)大。今秋決まったその名称に、「読みにくい」「書きにくい」との声が編集局に複数寄せられた。インターネット上には「広島県立と分からない」との指摘や、比叡山の「叡」の字が入るからか「仏教系の大学かと思った」との書き込みもある。なぜ「叡啓」?

 ▽育てたい人物像を表現

 叡啓大の運営を担う公立大学法人県立広島大(広島市南区)の新大学設置準備室に尋ねた。名称に対する疑問の声は準備室に届いていないとした上で、「叡啓」は大学で育てたい人物像を言い表した2文字だと強調する。

 新大学の名称を発表した今年10月の記者会見。中村健一理事長は、その名に込めた思いを解説した。「『叡』の訓読みは『かしこい』。『谷』と『目』が組み合わされた字で、物事を掘り下げて追求し見据えるとの意味がある。そうした力をもって『啓』、つまり新時代を切り開く人材を育てる」

 名称は同法人の教職員約10人で構成する準備室が決めたという。4月に検討を開始。新大学のカリキュラムを協議した有識者会議のメンバーにも候補を募った。50余りの案の中に「叡」の字があった。案には含まれていなかったが、新大学の理念に沿った「啓」の字を組み合わせた。

 「広島」とも「県立」とも付かない名称に異論はなかったのか。準備室の夏目啓一室長は「公立を明示した方が学生募集で有利かもしれないが、そこに甘えず学びの中身で勝負したい」と語る。

 「叡」と言えば、今年4月に開校した県立広島叡智(えいち)学園(大崎上島町)が思い浮かぶ。世界的な大学入学資格「国際バカロレア」を得るための教育プログラムを取り入れた全寮制の中高一貫校だ。

 夏目室長は「新大学にも同じ文字を冠することで、県民に一体感をイメージしてもらえるとも考えた」と明かす。県教委が公募して名称が決まった叡智学園。寄せられた205件の中にあった「叡」の字が採用された。これが「叡啓」の名の源流と言えそうだ。

 「叡啓とは、とんがった名前。珍しい」と、進学情報サイトなどを運営する大学通信(東京)の安田賢治常務。近年改称した大学のネーミングの傾向は、地名や学ぶ内容が一目で分かるようにするのが主流だという。「目立つ一方、受験生に理念やカリキュラムは伝わりにくい」

 少子化を背景に「大学全入時代」に入り、特に地方大学は学生集めに苦戦している。その中であえて新設する県立大は、「今までにない高等教育モデルを示す」(夏目室長)というように確かに意欲的だ。ソーシャルシステムデザイン学部の単科大、日英2言語での授業、1学年の4分の1は留学生、企業・団体と連携した社会の課題解決演習の導入…。「人づくり」に力を入れる湯崎英彦知事の思いが反映されている。

 叡啓大のキャンパスは広島市の中心部、中区幟町にある私立の広島国際大広島キャンパスの土地、建物を取得して置く。県負担は34億円超。県議会には学びの独自性も相まって、評価の声とともに「なぜ今、県が大学を新設するのか」との疑問も根強い。そんなところも「エリート育成」との批判もある叡智学園と重なる。

 公が提供する教育はどうあるべきか。従来の枠組みを変えたいとの県側の思惑も「叡啓」には帯びる。広島にこの大学を設ける意義は何か。公金を投じる以上、県には一層丁寧に県民に説明する責任があるだろう。(奥田美奈子)

 <クリック>叡啓大 広島県と、県立広島大(広島市南区)を運営する公立大学法人が2021年4月の開学を目指すソーシャルシステムデザイン学部だけの単科大。1学年の定員は100人で、アドミッション・オフィス(AO)入試が改称された「総合型選抜」で半数を選ぶ。学校推薦と一般入試で30人を選び、残る20人は留学生と想定する。学長には東京大副学長の有信睦弘氏が就任予定。JR広島駅(南区)から徒歩約10分の広島国際大広島キャンパス(中区)の土地と建物を活用する。

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