【こちら編集局です】プレミアム商品券は煩雑 「お年寄りはサポートないと利用しづらい」
10月からの消費税増税に合わせて始まったプレミアム付き商品券。「使い勝手はどうなんでしょうか」。広島市南区の会社員女性(59)から編集局に疑問が寄せられた。母(84)の元に市から案内が届いたが、今は施設で暮らす。代理で購入しようにも手続きがけっこう面倒だ。「お年寄りはサポートがないと利用しづらいのでは」。女性の声を受け、広島県内の自治体ごとの申請率を調べてみた。驚くことに平均で約4割と低調だった。せっかくの負担軽減策なのに、これでいいのだろうか。
プレミアム付き商品券とは消費税率アップの負担を和らげるため、最大2万5千円分の商品券を2万円で買えるお得な制度だ。対象となる住民税非課税の人はまず、(1)市町に申請書を提出する(2)購入引換券が届く(3)指定の窓口に出向き購入する―という手続きを踏む必要がある。
そこで今月6日時点での申請率を県内の全23市町に尋ねた。平均は41・1%。5割を超えたのは福山市(54・9%)と府中町(51・6%)だけだった。40%台は12市町、30%台は6市町、20%台も3町あった。ほぼ全ての市町に、「手続きが多くて分かりにくい」という声が寄せられていた。
さらに、大半の市町が使用期間を来年3月末までと設定しており、それを過ぎると無効になる。期間が短い上、「使い忘れてしまうかも」という心配から申請を控える人もいるそうだ。使える店も、事前に登録された店に限られる。
実際、対象者はこの商品券をどう受け止めているのだろう。広島市中区の主婦(85)は「ややこしい手続きをしてやっと手に入る、という感じ。パンフレットを作ったり申請書を郵送したりするのに税金がたくさん使われている。現金を振り込んでくれた方がよほど楽で、無駄もないのに」と苦笑する。
また「最大で2万円というが出費そのものが痛い。年金生活で暮らしは目いっぱいだから」という別の女性(75)のため息にも触れた。
さらに、申請率が最も低い安芸太田町(26・9%)ではこんな切実な声も。町の中心部から10キロ以上離れた地域で1人暮らしをする女性(85)は「買い物に行こうにも商品券が使える店は遠くて。バスの便数も少ないしね。普段利用する宅配で商品券が使えたらいいのに」。
申請していない人をたどると、「より支援が必要な人たち」という印象を強く受ける。体が不自由で窓口に行けない人、交通手段が乏しい人、購入するお金を用意するのが困難な人、どこで商品券を使えるのか情報を入手しづらい人…。負担軽減策を、確実に届けなければならない人たちではないか。
県立広島大保健福祉学部の田中聡子教授(社会福祉学)は「低所得者の生活実態や家計構造と制度とのギャップが大きいため、より支援が必要な立場の弱い人にとって使い勝手が悪くなっている。給付という形にすればより多くの人が活用できたのではないか」と指摘する。(藤田龍治)
<クリック>プレミアム付き商品券 原則、低所得者(2019年度の住民税非課税者)と、16年4月2日から19年9月30日の間に生まれた乳幼児がいる世帯の世帯主が対象。4千円で5千円分の商品券を買うことができるなど、25%分お得になる。子育て世帯には自宅に購入引換券が届く。申請率は各自治体が申請書を送付した人のうち提出があった割合。この低さを受けて竹原市、尾道市、庄原市、神石高原町などでは申請書の受付期限を1カ月以上延長した。国は事業の予算として約1819億円を計上した。
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