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カワハギ編 <1> ウマとマル 水温上昇が影、今や高級魚

2020/1/8 10:18
ウマ(ウマヅラハギ)

ウマ(ウマヅラハギ)

 細面のウマヅラハギも、丸い体形のカワハギも、ひとまとめにカワハギあるいはハゲと呼ばれることが多い。いずれもフグ目カワハギ科に属す。おちょぼ口がユーモラスな白身魚で肝が美味。寒の時季には鍋にもぴったりである。

 広島の漁師にならって前者をウマ、後者をマルと呼び分けよう。料理人から専業漁師に転じた広島市西区の岡野真悟さん(35)によれば、身の繊維が細やかなマルの方が刺し身は勝り、煮付けはフグのようなかみ応えのウマの方がよい。肝はマルの方が白くてきれいという。

 瀬戸内海でカワハギ類の漁獲の大半を占めていたウマは減っている。より暖かい海を好むマルの方は、これまで姿を消していた冬場も取れ始めた。温暖化による水温上昇がここにも影を落としているようだ。

 漁が減ったせいか昨秋、広島のデパ地下では水槽の中を泳ぐウマに100グラム約700円の値が付いていた。良型は今や高級魚である。

 日本海では巻き網、定置網、底引き網などでウマを取る。瀬戸内海では定置網のほか生態を利用した特徴的な漁法がある。好物のクラゲをおとりにおびき寄せる伝統漁もその一つ。昨年11月初め、山口県上関町室津の白浜漁港を訪れた。

 小型のこうもり傘を逆にしたような手作りの仕掛け網を使う。中央に真っ白いユウレイクラゲを幾重にも刺して海中に投入すると、ハゲ(ウマ)が食べに来る。その折に、しゃくるようにロープで網を上げてすくい取る。全て人力である。機械力だとロープをローラーに掛ける隙に獲物が逃げてしまう。

 クラゲが取れる夏から秋にこの漁をするのは室津で3人。最年長の佐藤時治さん(79)は「60年以上やっちょる。網が真ちゅうの針金からナイロンに変わったぐらい。昔は船のいけすがすぐ満杯になった」と波止の階段に腰を下ろして語った。

 「1日何百回も上げよると肩が痛うなるが、まだ力はあるよ」。差し出した当方の手がきゃしゃに見えるほど分厚い手で力強く握り返してきた。(山城滋特別編集委員)

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  • マル(カワハギ)
  • クラゲおとり漁の仕掛け

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