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【こちら編集局です】通行料、命名権活用は 開通20年の安芸灘大橋「早く無料化を」

2020/1/16 22:23
安芸灘大橋の手前に立つ看板。橋への命名権は先例もあり、法的な制限はない

安芸灘大橋の手前に立つ看板。橋への命名権は先例もあり、法的な制限はない

 呉市の本土側と安芸灘諸島を結び、18日には開通20年を迎える安芸灘大橋。通行料が高いとして、住民たちが早期無料化を求める請願を広島県議会に提出した動きを紙面で報じたところ、広島市中区の会社員男性(54)から「ネーミングライツ(命名権)を活用できないのか」との意見が呉支社に寄せられた。無料化が早まるのに役立つなら、スポンサーへの好感度も高まるように思えるが、実現性は―。

 ▽前例あるが県市は慎重

 意見を寄せた男性は仕事で呉市に通っており、しばしば「通行料が高い」という住民の声を聞いてきたという。普通車で片道730円、100回券なら3万1420円。橋を管理する県道路公社や県によると、総事業費のうち残る償還金は36億円。現行の計画では2030年まで、通行料による償還が続く見通しだ。その後も年間で数千万円単位の維持費が課題となる。

 一方、橋の無料化を公約の一つに掲げて当選した呉市の新原芳明市長は、安芸灘諸島振興に県の協力は欠かせないとして、「財源の確保など多くの課題がある。今、料金のことだけ県に言うのは得策ではない」とトーンダウンしている。

 そこで男性の目に留まったのが、命名権公募によって企業名などを冠した呉市内の施設だ。同市の命名権契約は19年4月から始まり、現在はホールや観光施設など10施設。5年で約6300万円が市に入る計算だ。収入は西日本豪雨の復興財源に充てられる。

 安芸灘大橋を所管する県も、広島市内のホールとグラウンドの2カ所で命名権を導入する。「橋の償還や維持費に充てられるのでは」との男性の意見は良案に思える。橋への命名権適用に、法的な制約もない。

 調べると先例もあった。神奈川県が公募し、商社の名を冠した同県平塚市の「トラスコ湘南大橋」(湘南大橋)。10年からの5年契約で、現在は2期目の終盤。年250万円の収入は維持管理などの財源に充てられている。

 だが、安芸灘大橋について広島県は「検討していない」とし、呉市も検討を求めていない。県道路企画課は「文化施設ほど名前の露出度は高くない。手を挙げてもらえるか実効性が問題」と指摘。県財産管理課も「橋の場所がきちんと分かる愛称になるか、企業名が付くことに住民の抵抗がないかなど、総合的な判断も要る」と慎重姿勢だ。

 橋ではないが、京セラ(京都市)が50億円で50年間の命名権を買い、3月に京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンする京都市美術館は、「歴史ある施設にふさわしいのか」と賛否の議論が起きた。

 応募者にとって、メディアへの露出度や、市民の反応は大きな判断材料になる。トラスコ湘南大橋は、箱根駅伝のコースとしてPR効果が大きい点で、安芸灘大橋と同等には考えられないかもしれない。

 今後、導入するかどうかは、県と市の姿勢次第だ。命名権に詳しい鳴門教育大大学院の畠山輝雄准教授(人文地理学)は「自治体が地域貢献の視点を含め、意義を訴えられるかが鍵になる。地図や標識に関わるので、契約のたびに愛称が変わるのは望ましくない。行政だけで決めず、幅広い議論が必要だ」としている。(見田崇志)

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