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広島16位、輝き続かず

2020/1/19
3区で競り合う広島の吉田(左)と山口の田村(撮影・安部慶彦)

3区で競り合う広島の吉田(左)と山口の田村(撮影・安部慶彦)

 19日にあったひろしま男子駅伝で、中国勢は地元広島が16位で2年連続の入賞を逃した。1区中野(世羅高)が2位と好発進し、3区吉田(青学大)も3位でつないだが、後半は勢いを保てずに順位を落とした。

 山口も3区田村(住友電工)の区間賞の力走で2位に浮上し、粘りのリレーを見せたが、最終区で23位に後退した。鳥取は3区のベテラン岡本(中国電力)の力走などで前回38位から18位にジャンプアップ。岡山は1区9位発進を生かせず、29位に終わった。島根は1区最下位の出遅れが響いて43位だった。

 ▽一時首位 選手代替の後半響く

 分水嶺(れい)を越えたかのように、広島が一気に流れを失った。先頭を奪った4区途中から後退が続いて16位。「途中までは理想的な展開だったが…。うまくかみ合わなかった」。岩本監督(ダイソー)は天を仰いだ。

 1区中野が過去最高に並ぶ2位で好発進。2区小島(磯松中)が5位でつなぎ、3区吉田へ。「先頭に立ち、貯金をつくる」。エースの思惑が佐賀や山口に阻まれたところから、少しずつ風向きが変わり始めた。

 4区吉本(世羅高)は前の走者につられて折り返し地点を誤り「動揺してしまった」。すぐに先頭に立ったが「後半にきつくなった」と5位に順位を落とす。5区新谷(世羅高)も区間31位で16位まで後退。「走り始めてすぐに疲れを感じ、体が動かなくなった」。目標のトップ3と入賞は大きく遠のいた。

 前回好走した倉本(世羅高)ら2人が直前に故障で欠場。代替メンバーで県の過去最高記録を44秒縮めたが、他チームの「高速化」に及ばなかった。アンカー相葉主将(中電工)は「力不足。来年は雪辱したい」。優勝した第1回大会から四半世紀。悔しさの募る失速を、逆襲への分水嶺にするしかない。(加納優)

 ▽1区中野、無心の快走

 中野は無心で走った。前だけを見て走った。広島にとって「鬼門」の1区についてや、設定タイムは頭にない。「考えたのは、一人でも前で渡すことだけ」。第8、10回大会の区間記録を4秒更新し、区間2位の19分47秒で駆け抜けた。

 高速レースは予想していた。「先頭に付いていき、最後に前に出たもん勝ち」と考え、残り1キロのスパート合戦では躍動感たっぷり。「区間賞には届かなかったが、自分の役割は果たせた」と胸を張った。

 地元の期待は、時に1区の走者の重圧となった。過去5年、1桁順位で滑り出したのは1度だけ。前回5区23位の中野はこの1年、精神面が成長した自負があった。「力むと体がいらない動きをする。何も考えず、緊張せず走れた」。ジンクスを打ち破り、「今回で悪い印象はなくなればいい」と照れ笑いを浮かべた。

 1秒差で敗れた宮城の吉居大(仙台育英高)とは、今春から中大で同級生となる。「次は勝ちたい。一つ一つ無駄にせず、自分の力にする」。次代の広島を引っ張る、地に足の着いた18歳が現れた。(矢野匡洋)

 ▽山口23位、諦めぬ走り 区間賞田村13人抜き

 山口の序盤は想定通りだった。3区を終えて2位。4区阿部(西京高)の体調不良があり、23位に終わったもののタイムはチーム記録を23秒も更新した。二宮監督(西京高教)は「崩れかけても、そこから踏ん張れた。今後につながる」と手応えを口にした。

 ハイライトは3区田村主将の激走。区間賞で13人を抜いた。「(広島の吉田ら)知人を抜くうちにランナーズハイのようになった。区間10位ぐらいでいいと思っていたのに」。目標の東京五輪1万メートル代表へ「1段階進めた」。

 4区の区間42位で順位を落としたが、ここから踏ん張った。6区の重山(萩東中)は区間4位で3人をかわし「力を出し切れた」。昨年より順位を一つ上げ、監督は「これが大きい。24位なら半分より下なので」と冗談めかしつつ「若い世代も育ってきた」と喜ぶ。

 一時は首位を争い「後輩はそういう順位での心の持ち方を学んだはず」と田村主将。貴重な経験が山口の今後の飛躍につながることを期待した。(森下敬)

 ▽鳥取18位 初入賞持ち越し

 鳥取の「初入賞」と「初区間賞」は、次回以降に持ち越しとなった。レース中盤まで届きそうだった入賞ラインは次第に遠ざかり、18位でフィニッシュした。

 1区は28位発進。2区の山田(湯梨浜中)は区間3位の力走で5人をかわしたが「区間賞を狙っていたので、取れずに悔しい。気持ちが焦って突っ込み過ぎた」と笑顔はなかった。

 3区の岡本主将は区間2位、12人抜きの11位でたすきをつないだ。「上位が見える位置で楽しく走れた。ここまできたら、後輩たちより先に区間賞を取る」と、早くも18度目となる次回の出場へ意欲を示した。(山本修)

 ▽岡山29位 接触から順位落とす

 全国高校駅伝2位の倉敷高勢を中心に、上位進出を狙った岡山は29位に終わった。新監督(倉敷高教)は「中高生がかみ合わなかった」と厳しい表情だった。

 アクシデントから再浮上のきっかけをつかめなかった。1区石原(倉敷高)がトップと7秒差の9位発進。だが中継所で2区大西(早島中)が他選手と接触して足首を負傷し、順位を落とした。5区藤原(水島工高)は「最初から突っ込んだ」と3人を抜いたが、終盤で巻き返せなかった。

 タイムは前回から1分2秒縮めながらも順位は九つ落とした。「高速レース化している中で底力のある選手を育てないと」と指揮官。大西は「次のチャンスをもらえたら粘りを見せる」と誓った。(西村萌)

 ▽島根43位 全国の壁厚く危機感

 1区最下位発進の島根は43位でフィニッシュ。3年連続の40位台に終わり、目標の30位台に届かなかった。

 1区の1年生伊藤(出雲工高)は「2キロすぎから足が動かなくなりスピードの差を感じた」とじりじり後退。2区以降も厳しい状況が続いた。5区で一つ順位を上げた上田(出雲工高)のように、「目標タイムより良かったので満足している」と意地を見せた選手もいたが、中高生区間で最もいい順位だったのが上田の区間33位。全国の厚い壁が立ちはだかった。

 この10年で40位台は8度目。河村監督(向陽中教)は「競技人口が減る中、競技力をどのように維持するか。指導者の本気度が試されている」と危機感を口にした。(貞末恭之)

 ▽【大会総評】「王国」長野の底力に感服 「ジュニア育成」重要性を再認識

 平成で最多7度の頂点に立った長野は、令和でも強かった。しかも、5000メートル13分台というエース級の高校生2人を大会直前に欠く中での栄冠。「駅伝王国」の底力には感服するほかない。

 第25回の節目で、「ジュニアの育成」の重要性を再認識した。主力の欠場をカバーした高校生に加え、中学生2人も好走。高校時代から出場する一般2選手も力を出し切った。県を挙げてこの駅伝に懸ける思いが「育成力」を支える。

 長野に次ぐ5度の優勝を誇る兵庫も、2位と久々に存在感を示した。中学生が力走し、10年ぶりに出場したアンカー延藤も埼玉の実力者・設楽の追い上げを振り切った。王国復活への足掛かりにしたい。埼玉も県出身者だけの陣容で3位と地力を見せつけた。

 地元広島は2年連続の入賞を逃した。何度も辛酸をなめてきた1区で好発進したものの、4、5区で大きく後退。高校区間には複数の「柱」が必須だけに、悔しさを味わった世羅高の2年生コンビに奮起と成長を期待したい。

 「高速化」も今大会を彩るキーワードだろう。6位までが大会記録を更新し、計26道府県がチームの最高タイムを塗り替えた。東京五輪を終えた次回はどんなメンバーが集うのか。出場選手の五輪での活躍と併せ、目の離せない一年になる。(加納優)

この記事の写真

  • 1区で区間記録を更新し、2位と快走した広島の中野(中)=撮影・田中慎二
  • 区間3位の力走で5人を追い抜いた鳥取の2区山田
  • 5区で力走し、順位を三つ押し上げた岡山の藤原
  • 島根の5区上田(右)からたすきを受けてスタートする6区佐々木

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