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新生長野、不屈の走り 大会記録1分32秒更新

2020/1/19
8度目の優勝を飾り、選手とスタッフに胴上げされる長野の高見沢監督(撮影・山崎亮)

8度目の優勝を飾り、選手とスタッフに胴上げされる長野の高見沢監督(撮影・山崎亮)

 広島市中区の平和記念公園前を発着する7区間48.0キロで競った天皇杯第25回ひろしま男子駅伝は、長野が従来の記録を1分32秒更新する2時間17分11秒の大会新記録で3年ぶり8度目の優勝を飾った。

 長野は3区終了時の15位から追い上げ、6区吉岡(川中島中)の区間新の快走で先頭へ。アンカー中谷(早大)が兵庫や埼玉の追い上げをかわした。

 兵庫が2位で5年ぶりに入賞。3位埼玉、4位佐賀、5位静岡、6位茨城までが従来の大会記録を塗り替えた。2連覇を狙った福島は1区の出遅れが響いて14位に終わった。(加納優)

=スタート時の気象状況。気温8.6度、湿度50.3%、西南西の風0.7メートル。

 ▽中高生奮闘 低評価覆す

 長野は簡単に折れない。5000メートル13分台の高校生2人を欠くアクシデントに見舞われながら大会新で3年ぶりの頂点。高見沢監督(佐久長聖高教)は「まさか優勝するとは。選手がよくやってくれた」と驚いた。駅伝界の大木は、記録と記憶に残る歓喜の幕切れを演じた。

 代役の高校生の奮闘がVへの土壌を築いた。1区越(佐久長聖高)が10位で滑り出し、「重圧に打ち勝って自分の走りができた」。3区で15位まで後退したが、補員だった4区木村(同)が7人抜きの快走。4区から5区に代わった宇津野(同)は5人をかわして3位に押し上げた。作戦通り6区で先頭に立ち、逃げ切った。

 新たな才能が次々に芽吹いた。3年前の優勝時、走れなかった選手たちだ。木村は当時補員で、「リベンジをしたかった。チャンスだと思った」と悔しさを糧にした。宇津野はメンバー入りを直前で逃し、自宅のテレビで見届けた。「初めて広島に来られた。スタートから思い切っていった」と胸を張った。

 低評価を覆してつかんだ8度目の優勝。3区の春日主将(ヤクルト)は「中高生が頑張ってくれた。自分の走りは納得していないけど、助けてもらった」。受難に耐えて年輪を重ね、一段とたくましくなった。(川手寿志)

 ▽中谷、首位守り感慨ゴール 「沿道の光景は一生忘れない」

 1年前、両手を合わせてわびたランナーは、右手を突き上げて喜びを爆発させた。3位でゴールした前回と同じ7区を志願した長野の中谷(早大)が、後続の追い上げを寄せ付けず、先頭でゴールへ。「リベンジしたかった。ゴールへ続く沿道の光景は一生忘れない」と感慨に浸った。

 トップでたすきを受けたが、2位兵庫とは8秒差。「いいペースで押していける感覚はあった」。前回、ペースアップについていけなかった7キロを過ぎてもスピードは落ちない。「怖かった」と何度も振り返って後続を確認したが、残り2キロで間隔が詰まっていないと分かると優勝を意識。1キロを切って確信した。

 昨年3月に単身、ケニアへ武者修行。ひたむきに走るランナーの姿に「もっと強い気持ちが必要」と思いを新たにした。昨夏、左脚の故障が続き、本格的に走り始めたのは11月に入ってから。それでも広島で走る姿を思い描き続けた。

 「苦しい期間を乗り越えて、納得いく走りができたのも県民の支えがあったからこそ。今度は世界を舞台に活躍して恩返ししたい」。世界へ飛躍する夢を描く。(山成耕太)

 ▽「強い兵庫」復活の2位 光ったジュニア世代

 復活を印象づけた。過去5度の優勝を誇る兵庫が2位に入り、5年ぶりの入賞。三木高時に優勝を経験して以来、10年ぶりに故郷のユニホームを着た延藤主将(マツダ)は「ようやく強い兵庫が戻ってきたかな」と笑みをのぞかせた。

 ジュニア世代の層の厚さが光った。2区長嶋(氷丘中)は12人抜きを見せ、高校エースが集う5区は全国大会初出場の菅野(姫路商高)が区間9位で踏ん張った。「みんな速くてびっくりしたが、楽しく走れた」と充実感に浸った。

 阪神大震災から四半世紀の節目に加え、昨秋には兵庫陸協の西川公明会長が死去。選手はユニホームの右胸に喪章を着けて臨んだ。山口監督(須磨学園高教)は「若い子がはつらつと走り、いろんな方への感謝が凝縮された駅伝だった」と振り返った。

 6区3位と力走した熊井(大池中)は「次は区間新を出したい」とステップアップを期す。それはチームも同じ。延藤主将は「来年は優勝を視野に入れられる」と明るい未来を思い描いた。(友岡真彦)

 ▽アンカー設楽、逆転ならず 3位埼玉

 埼玉は思い通りの展開に持ち込んだはずだった。しかし首位と21秒差の4位でたすきを受けた7区のエース設楽主将(ホンダ)は、順位を一つ上げるのが精いっぱい。「中盤から体がきつくなった。(区間順位で)大学生2人に負けて悔しい」と淡々と振り返った。

 設楽から激励を受けて宿舎を出発した中高生が、優勝争いの道筋をつくった。1区白鳥(埼玉栄高)が首位と9秒差の11位と好発進。2区以降、徐々に順位を上げると4区唐沢(花咲徳栄高)で一時、首位に躍り出た。

 しかし、レース前日の夕方に合流した設楽は万全の状態ではなく、首位の背中を捉えられなかった。大沢監督(ホンダ)は「その中でもよく走ってくれた」とかばい、白鳥は「楽に走ってもらうために、もう少しタイムを絞り出せていたら」と唇をかんだ。(貞末恭之)

 ▽勇退の指揮官、感無量 4位佐賀

 佐賀が4位と健闘した。今大会限りで勇退する古川監督(鳥栖工高教)は「よく持ちこたえてくれた」。初めて指揮した2012年以来の入賞に感無量の様子だった。

 1区杉(鳥栖工高)が8位と好発進し、3区古賀(安川電機)が首位に立った。4区中島(鳥栖工高)は折り返し地点を間違えたが、「監督に恩返しを」と1位と9秒差の2位でつないだ。その後順位を落としたが、アンカー井手(神奈川大)が「監督勇退を聞き、無理をしてでも頑張ろうと思った」と一つ順位を上げた。(山成耕太)

 ▽好発進、3年ぶり入賞 5位静岡

 静岡は1区の好発進とアンカーの力走が、3年ぶりの入賞につながった。

 1区尾崎(浜松商高)がトップと5秒差の7位。1位と30秒差以内というプランより速かった。「ハイペースを予想し、スピード練習に力を入れた成果。タイムは考えず先頭に食らい付いた」と胸を張った。

 11位でたすきを受けた7区伊藤(東京国際大)が6人抜き。5位でゴールし、箱根駅伝2区2位の実力を発揮した。「常に『前の走者が8位の選手だ』と思って走った」と入賞への思いが熱走につながった。(上木崇達)

 ▽「全員駅伝」手応え 6位茨城

 茨城は過去最高に並ぶ6位に入り、タイムは大会新の2時間18分41秒。1区5位発進し、2区で首位に立った展開に、内田監督(竜ケ崎一高教)は「全員駅伝で前半から好位置につける想定通りのレースができた」と破顔した。

 5区で順位を2位に押し上げた赤津(日立工高)は「いい走りで貢献できた」。指揮官は「チーム最高(順位)の更新という宿題ができたのも収穫。手応え十分の大会になった」と上機嫌だった。(森下敬)

 ▽前回V福島、出遅れ14位

 終盤の追い込みで連覇を狙った福島は、序盤の出遅れが響いて14位に終わった。1区渡辺(学法石川高)が41位発進。安西監督(安西商会)は「いい状態でレースに臨ませてあげられず、彼につらい思いをさせてしまった」と声を落とした。

 5区松山(学法石川高)とアンカー相沢(東洋大)の区間賞で追い上げたが、入賞争いにも絡めなかった。不調で控えに回った円井主将(マツダ)は「走ることができなかった自分を含め、この経験を生かして強くなりたい」と前を向いた。

 ▽三重、僅差の8位

 三重が9位とタイム差なしの8位入賞をつかんだ。最後に逃げ切った7区塩沢(東海大)は「どきどきしました」と喜んだ。

 ゴール手前で宮城の村山(旭化成)に追い上げられた。だが「前だけを見ていたので(追い付いてきたのを)知らなかった」。ゴールは同じタイミングで、ほんの少しだけ先着。6年ぶりの入賞に「一人一人が力を出した」とチーム一丸を強調した。

この記事の写真

  • 3年ぶりの優勝を手繰り寄せる力走を見せた長野の7区中谷(撮影・浜岡学)
  • 5年ぶりの入賞となる2位でゴールした兵庫のアンカー延藤(撮影・藤井康正)
  • 6区星野(左)からたすきを受けてスタートする埼玉の7区設楽(撮影・井上貴博)

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