【こちら編集局です】気温の「平年」、いつのこと? 「暖冬でよく聞くけど、更新されますか」
この冬は記録的な暖かさだ。「よく『平年より気温が高い』などと聞きますが、平年っていつのことを指すの?」。広島市安佐北区に住む嘱託職員の女性(58)から、編集局にこんな質問が寄せられた。「ちゃんと更新されるものなんでしょうか」。確かに記者も無意識にこのデータを用いてきた。そもそも平年値とは何だろう。
▽30年間の平均、10年同じ
1月20日は二十四節気で最も寒いとされる大寒だった。この日、中区の最低気温は5・7度で、平年より4・1度も高かった。3月下旬並みに暖かく、縮景園では早くも梅が見頃を迎えていた。平年より何度高いか、低いか―。気象の記事には欠かせない要素で、必ず確認する。平年値とはその土地の気候の「基準」となるデータだからだ。
早速、算出方法について気象庁に尋ねると「30年間の平均値」という。現在の値は1981〜2010年の平均で、11年5月から適用された。更新は10年ごと。地球温暖化の影響で気温は上昇傾向にあるが、平年値は10年間変わらないということになる。
来年5月からは1991〜2020年の平均値が使われる。更新間近の今は、平年値と実際の気温との「ずれ」が最も大きい時期ともいえる。ことしの大寒がそうだったように、ずれが顕著だからこそ地球温暖化の怖さを肌で感じることができるのだろう。現在の広島市中区の年間平均気温の平年値は16・3度。約50年前の14・8度から1・5度上昇した。
同庁計画課情報管理室の道城竜・統計技術管理官は「次の平年値は、比較的気温の低かった1980年代の記録が外れ、高かった2010年代の記録が加わる。平年値はさらに上がりそう」と予想する。それは実際の気温とのずれが小さくなることでもある。地球温暖化への危機感を共有しにくくなるのでは、と心配になる。
気象予報士の田中健路・広島工業大教授(気象学)は「来年、平年値が更新されたらこれまで『異常』だった気温が『平年並み』に近づく。でも熱中症など健康被害や災害リスクが減るわけではなく、問題が見えにくくなる」と指摘する。「変動する気候により敏感になり、環境保全への取り組みを強めていく必要がある」と強調している。(藤田龍治)
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