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【交論】外国人労働者受け入れ

2020/2/3 18:16
山本太郎代表

山本太郎代表

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が施行されてから、この春で1年を迎える。従来の技能実習制度を巡っては、国際貢献をうたいながら実態は人手不足の穴埋めで劣悪な働かせ方が横行しているとの批判が絶えない。日本の外国人労働者の在り方を批判する、れいわ新選組の山本太郎代表と出入国在留管理庁の伊藤純史調整官に考えを聞いた。

 ■技能実習制度は世界の恥やね れいわ新選組代表・山本太郎氏

 ―入管難民法を「トンデモ法」と批判し、政権を取った場合の緊急政策として見直しを掲げていますね。

 廃止すべきです。そもそも改正議論の時点で中身が詰まってなく、大枠だけ決まっていた。大枠とは安い労働力の外国人を大量に長く働かせようというもの。これは経団連が強く要求していた。入管難民法の改正では経団連の中西宏明会長が「経団連の意見がかなり反映されたことを評価する」とまで言ってますから。経団連の要求はほぼ形になるのが今の政治です。

 政府はこれまでも派遣労働などいろんな非正規労働の形で雇用の流動性を高め、企業の収益を上げてきた。その極め付きが海外からより安い労働力を持ってくること。いくとこまでいっちゃってる。

 ―従来の技能実習制度も問題点が多く指摘されています。

 技能実習はあなたの祖国に日本の技術を持って帰って役立ててくださいという話だったが、いま行われているのは労働の調整弁。外国人を安い労働力として便利に使う。中には非人間的な扱いも報告されている。

 厚生労働省のまとめでは監督指導に入った事業者の7割以上が法令違反だった。(失踪した実習生への法務省の聴取票を)野党が独自分析した結果、最低賃金以下が約7割。最も低い時給は93円だった。約10%が過労死ライン以上働かされ、最長は週140時間ですよ。暴力やパワハラ、セクハラもある。これ奴隷労働と言わずして何と言うんだ。悪い労働環境が全て詰まったようなものです。

 心ある事業者がいるのも理解しますが、多くが日本人を働かせるよりも差別的な扱いをしているのが実態。何よりもこれ世界中から非難を浴びているということですね。国連の人権に関わる委員会からはほぼすべて勧告を受けている。同盟国のアメリカでさえも国務省の人身売買報告書で趣旨としては奴隷労働をやめろと。もうほんと、これで「日本は最高だ」と誰が思うんだよってことです。

 ―2018年12月の改正入管難民法の採決では牛歩や与党席に「恥を知れ」と罵声を浴びせていましたが。

 これはどれぐらい「やばい法律」かを多くの人がシェアできる状態にしないと。国内労働者が外国人に置き換わる可能性はないですかってことです。安い方が良いんだから。日本人の働き方が担保されていないのに外国人の劣悪な状態が重なったらどうなるのか。労働環境は悪い方に、賃金も安い方に合わされる。

 この法改正で日本人が自分に降りかかる影響を意識できていない。幸いなことには(新設された特定技能の)受け入れはそんなに進んでいない。悪名高い日本の労働環境がアジアで広まっているのではないかと思う。

 ―海外との関係に悪影響も出るのではないですか。

 先ほどの技能実習については技術の移転どころか全然違う内容の仕事をさせられる。全然やってること違うやん。まったくでたらめな状態。日本に来たことを後悔する若者を大量につくり出して何がしたいのか。受け入れ態勢ができていない無責任さとこれまでの被害者のことを考えると恥ずかしいです私は。日本の恥というか、世界の恥やね。

 ―実習生に計画と違う単純労働をさせた問題で中西会長の日立製作所が改善命令を受けました。技能実習計画の認定を取り消された三菱自動車などに比べ、軽いとの見方があります。

 役人の忖度(そんたく)以外の何ものでもないでしょ。日本の最も大きい経済団体のトップが日立の会長。本来なら一番厳しい処分にしなければならない。経団連トップの企業でさえペナルティーが科されるなら全ての企業への警告になる。国の姿勢を示すのに最もわかりやすい。だが、結果はそうならず、違反しても大丈夫とのメッセージになりかねない。(堀晋也)

 やまもと・たろう 74年生まれ。兵庫県宝塚市出身。90年に芸能界入りし91年俳優デビュー。11年3月の福島第1原発事故の翌月から反原発活動開始。13年に参院選東京選挙区で初当選し1期務めた。19年4月、れいわ新選組を立ち上げ、代表に就任。

 ■日立への改善命令、忖度ない 出入国在留管理庁調整官・伊藤純史氏

 ―日立製作所など大手企業で技能実習制度の法令違反が相次いでいます。

 非常に残念だ。ルールを守ってもらうことは外国人との共生社会を実現する上での大前提と思っている。法令違反が生じていることを重く受け止めている。

 ただ改善策も講じている。2017年11月に技能実習適正化法が施行された。国の認可法人の外国人技能実習機構が実地検査、実習先の変更支援、母国語での相談などを通じて実習生の保護を図っている。給料が適正に支払われるよう口座振り込みによる支払いを原則義務付けるなどの省令改正も今進めている。

 ―技能実習生が実質的には労働力として企業に使われていませんか。

 技能実習制度は単純な労働目的ではないことに意義がある。生じる問題には適正に対応しなければならない。制度の必要な見直しを随時図っていきたい。

 ―笠戸事業所(下松市)で技能実習適正化法に違反した日立に対し、入管庁は技能実習計画の認定取り消しより軽い改善命令にとどめました。日立の会長は経団連会長。忖度(そんたく)はありませんでしたか。

 ないと言わざるを得ない。われわれは事案を承知した段階で必要な指導を行う。それを踏まえ改善の見通しが立っているか、技能実習を継続して実習生が母国へ本来の技能を持ち帰ることができるかを総合的に判断している。改善命令か、認定取り消しかはその判断の結果だ。決して別の意図があるわけではない。

 ―技能実習で違反が相次ぐ中で昨年4月に新たな在留資格「特定技能」制度が始まりました。外国人受け入れの環境は整っていますか。

 技能実習で生じたような反省点は特定技能で繰り返すわけにいかないという方針の下で法令を整備している。技能実習の省令改正で進めている口座への給料支払いの義務化などは特定技能では先行して始めた。

 ―入管難民法を改正して特定技能を始めた意義は。

 労働力が不足しているとの声がさまざまな業界から出ていたため大きな政策転換をする。それまでは高度な技能や知識がある外国人しか受け入れることができなかった。その枠を広げて人手不足を解消したい。

 ―技能実習と特定技能を併存させる理由は。

 一本化した方がいいという声はあるが、それぞれ趣旨が違う。技能実習は日本で技能を習得して、母国に持ち帰ってもらう制度だ。国際協力として引き続き維持発展させるべきだ。労働目的で受け入れたい企業には特定技能を活用してもらえばいい。二つの制度を一本化することは現時点で考えていない。

 ―外国人労働者の受け入れの現状をどう受け止めていますか。

 1月17日時点で2639人が特定技能の資格の許可を受けた。かなり増えている。同日時点で技能試験には5991人が合格している。当初は低い数字から始まったが、今後は右肩上がりに増えていくと思う。

 ―外国人との共生を掲げるのに特定技能を移民政策ではないとしているのは。

 政府は移民政策を採らないと明確にしている。特定技能制度をつくる際にさまざまな議論があったが、特定技能1号は在留期間を5年に絞り、家族の帯同を認めていない。在留資格者の配偶者や子どもも受け入れるだけの共生社会の整備ができていないのが理由の一つ。共生社会の実現へ政策の強化に取り組みたい。

 ―日本人の雇用が奪われる懸念はありませんか。

 特定技能によって日本人の雇用に影響を及ぼさないのが政府のスタンス。特定技能の対象14分野はいずれも作業の機械化や効率化を図り、高齢者や障害者も含め潜在的な労働力の活用を尽くしても人手が足りないという業種だ。人手不足でなくなれば対象から外れる分野も当然出てくる。(河野揚)

 いとう・じゅんじ 76年生まれ。神戸市出身。大阪大経済学部卒。99年法務省入省。入国管理局企画室補佐官、東京入国管理局就労審査第1部門首席審査官、入国管理局企画室調整官などを経て、19年4月から現職。

 ▽避けて通れない問題だ

 外国人労働者の受け入れを巡っては、自身の取材経験から日本社会の本音と建前を如実に感じさせられた。途上国への技術移転をうたいながら、実際には安い労働力の外国人を当てにしなければ成り立たなくなっているのが現実である。

 こうした矛盾が生み出す問題点を山本氏は「日本に来たことを後悔する若者を大量につくり出している」と批判する。一方、国の担当部門の責任者である伊藤氏も「技能実習で生じたような反省点は特定技能で繰り返すわけにいかない」と述べる。世界中で移民や外国人労働者を巡る問題が噴出する中、日本はどうあるべきか。誰もが避けて通れない問題だ。(堀晋也、河野揚)

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