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保守王国 <5> 多弱野党の役回り まとまり欠き自民に利

2020/2/18
山口市内での街頭演説で「共闘」に向け気勢を上げる野党県組織の代表たち(1月20日)

山口市内での街頭演説で「共闘」に向け気勢を上げる野党県組織の代表たち(1月20日)

 ▽多様な民意 反映できず

 「安倍政権の横暴を許さないぞ」

 次期衆院選をにらみ1月半ばに山口市の市中央公園前であった野党統一候補のお披露目集会。主催した市民団体共同代表で児童文学作家の那須正幹氏は、山口1区で立候補を予定する国民民主党の新人大内一也氏(46)たちと並び訴えた。

 県内野党各党の幹部ら約100人が集まったが、足を止める市民はほとんどなく、まばらな聴衆の多くは共産党の支持者。国民民主党の最大の支援組織で会場近くに事務所を構える連合山口を代表しての参加者はゼロだった。中元直樹事務局長に不参加の理由を尋ねると「会が開かれること自体聞いていない」という。

 ▽市町議会1割

 大企業の労働組合が主導する連合は「非自民」とともに「反共産」の看板を掲げる。県内の過去の選挙でもたびたび両者の反目が野党共闘に水を差してきた。昨年の参院選では各党のスタンスの違いから原発問題などで踏み込んだ主張を打ち出せず、反自民の受け皿になりきれなかった。

 全国屈指の保守王国で自民党が選挙で圧倒的な強さをみせる山口。民主党が政権の座から滑り落ちた2012年12月以降、県内の衆参両院の議席は全て自民が独占している。

 定数47の県議会も自公で全議席の7割を占める。市町議会は、各党県組織などによると、全19市町の計380議席のうち野党所属は各党を合わせても1割の40人にすぎない。最多は共産の32人。各世論調査において野党で最も支持率が高い立憲民主党は岩国市などに3人だけ。与党の公明党は1割弱。自民党は党員であっても党籍を名乗らないケースも多く、県連も詳しく把握していないが、圧倒的多数とみられるという。

 ▽「タマが弱い」

 元民主党衆院議員の平岡秀夫氏は、次期衆院選や最近の選挙の野党候補について「タマが弱い」と指摘する。元大蔵省(現財務省)官僚の平岡氏はこの20年間の県内の衆参院選で野党で勝ち上がった唯一の人物だ。山口2区で4度、自民党候補を破った。

 いまは立憲民主党県連の顧問で次期衆院選でも野党共闘を促す立場だが「山口の自民の権力への執着は半端じゃない。知名度の低い候補では話にならない」と厳しい表情を浮かべる。

 昨夏の参院山口選挙区(定数1)で野党は国民民主党の大内氏を統一候補として担いだが、自民党現職の林芳正氏に25万6千票差で大敗。1月26日の岩国市長選では元自民党衆院議員で現職の福田良彦氏に、共産党県東部地区委員長の米重政彦氏が挑んだが、こちらも3倍以上の票差をつけられ大敗した。

 次期衆院選で野党陣営は現在、山口1区に大内氏、2区に共産党新人の松田一志氏(62)、3区に立憲民主党新人の坂本史子氏(64)が立候補を予定する。だが、大内、松田の両氏は過去の衆参院選で1度ずつ、坂本氏は衆院選で1度落選。野党関係者の中からも「正直厳しい」との声が漏れる。

 ある地元の自民党国会議員の秘書は「山口では前回の票をどれだけ上積みできるかだけだ」として野党は敵ではないと言い切る。

 昨年の参院選の比例代表で県内の自民党の得票率はほぼ5割。一方、野党の得票率は10%近い立憲民主党を筆頭に合計で約3分の1と、国政と地方における両者の議席数ほどの差はない。自民党の議員だけでポストを独占するのは多様な民意を反映しているとは言いがたい状態だ。山口で自民党を1強たらしめているのは多弱野党のふがいなさの裏返しでもある。(門脇正樹)

    ◇

 「保守王国」は今回で終わります。

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